消費税は景気にマイナスか?

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 消費税の8%から10%への引き上げが1年半先延ばしされることになった。 その理由が、まだもたもたしている景気回復機運に水を差してしまう恐れがある、せっかくのデフレ克服策を台無しにしかねないといったところが挙げられる。

 表面的にはそういうことなんだろうが、本当に経済活動を委縮させてしまうのだろうか? いつも書いているように、先進国ではどこでも消費税すなわち付加価値税を導入しているが、その平均は18%である。 スウェーデンやチェコでは25%となっている。

 各国の付加価値税は、この20数年間にわたって少しずつ引き上げられてきた。 それでも、米国やヨーロッパ各国の経済は2倍の規模にまで拡大しているのだ。

 一方、日本では消費税導入ならびに税率の引き上げは政治家にとって鬼門となっており、幾度となく挫折を繰り返してようやく8%まで漕ぎつけた。 その間に、日本経済は拡大どころかじり貧と縮小の道を歩んだ。

 付加価値税を引き上げた欧米諸国の経済は2倍となっているのに対し、日本では消費税は生活者に負担を強いるとためらって結果的に経済規模を縮小させている。 この逆説を、国はじめマスコミはどう説明しようか?

 経済が成熟してきている先進国では、付加価値税つまり間接税の比重が高くなるのは避けられない。 一国の経済が拡大発展期から高度成長の段階にある間は、企業や国民の所得がどんどん増えていくから、国の税収も順調に伸びる。 だから、法人税や個人所得税つまり直接税一本やりで十分やっていける。

 ところが、経済が成熟化してくるにつれて成長率は下がり、国民の所得の伸びも鈍る。 直接税による国庫収入も減り気味となっていく。 反面、景気浮揚や雇用促進あるいは高齢化対策などの国庫出費はどんどん増加する。 その結果、財政赤字が拡大する一途となる。

 そこで登場してくるのが、消費税や付加価値税すなわち間接税でもって税収不足を補おうとする考え方である。 成熟経済では避けて通れない税収不足を、国民全員で広く薄く負担しようというものだ。

 さらには、間接税の税率を高める一方で法人税や所得税を減税して、意欲ある企業や個人にどんどん富を創出させる。 それでもって成熟経済を活性化させる、といった考え方にまで進化してきている。

 成熟経済では先輩にあたる欧米先進国の間で、もがき苦しみながら進化させてきた税体系や経済活性化策を、日本が参考にしない理由はない。

 政治家はもっと全体像を語るべきである。 そして、格差拡大とか経済的弱者をないがしろにしているといった表層的な反対論に対し、勇気と気概をもって成熟経済日本をどう活性化させ、ひいては国民全体の幸せにつながる政策を断行すべき時である。

 総選挙の争点も、まさにこの一点にあるはずである。