債券投資で安全に?

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 昨晩のインベスターズ TV での質問に、資産運用は分散投資すべきであって、その一部は債券投資で安全にというのがあった。 真面目な方らしく、すごく丁寧な質問ではあったが、心を鬼にして厳しくお応えした。

 ファイナンシャルプランナーなど専門家は口をそろえて資産分散だ、債券投資で安全にという。 よくある、卵は一つのバスケットに入れないとか、債券は株式と違って値下がりリスクが小さいとかの説明を持ち出して、そういったアドバイスをする。

 分散投資とか債券投資の有用性を否定する気はないが、それも時と場合による。 1980年代半ばから30年間ほどは、まさに分散投資が幅を利かせた時代だった。 債券価格は安定的に上昇トレンドを追っていたし、株式投資も抜群の成績を収めた。

 その30年間というものは、財産づくりの教科書通りの展開が続いたわけだ。 とはいえ、国際分散投資あるいは債券と株式のバランス分散とやらの結果と、単純すっきりと株式投資一本ヤリでいったのとでは、どちらの成績が勝ったかは一度調べてみるがいい。

 しかし、2007年8月のサブプライムローン問題や2008年9月のリーマンショックでは、分散投資が全く意味をなさなかった。 ほとんどすべての投資商品が値崩れしたためだ。

 その後、債券は国債中心にリスク回避の資金が流れ込んだこともあって、再び高値圏へと値戻しした。 一方、株式は米国やヨーロッパなど先進国市場では史上最高値を更新する展開となっている。 株式投資の方がずっと上の成績となっているわけだ。

 あえて言えば、80年代半ばから今日に至るまでの40年間は債券投資家にとっては黄金の時代であった。 それをベースに債券の安全神話が醸成されてきたのだ。 ちなみに、1970年半ばから83年ごろまでというもの、債券はボロボロに叩き売られていた。

 あの当時の債券市場を知っている運用者は、もうほとんど現役で残っていない。 ファイナンシャルプランナーたちも、その後の債券黄金の時代に書かれた投資の教科書で勉強した人たちばかりである。

 いま世界を見渡すに、先進国の国債中心にバブル状態にある。 未曽有の金融緩和とか異次元の資金供給とかで大量にばら撒かれた資金が、リスク回避で米国やドイツそして日本の国債市場に流れ込んでいる。 その証拠に、米国の10年物国債が2.4%台の流通利回りとなっているし、日本では0.5%ちょっとである。

 この先、そういった国債にどれだけ価格上昇余地が残されているというのだろう? 流通利回りが恐ろしく低水準ということは、債券価格は恐ろしく高くなっていることでもある。

 おそらく、そう遠くない将来に債券価格は値崩れに転じよう。 世界の景気が立ち直ってくれば、マネーはリスク回避よりもより高い利回りを求めだし、現在保有している低利回り国債は売られる。 あるいは、大量にばら撒かれた資金がマネタリーインフレをもたらし、それが国債売りを誘発する。

 どちらにしても、国債の値下がりは避けられないだろう。 満期まで持ち切れば元本は戻ってくるから大丈夫といったところで、その間のリターンが年2.4%とか年0.5%でしかない。 どう考えても、債券投資に分はない。

 まあ、ここから10年ほどは債券投資から遠ざかった方が無難である。 それを象徴する動きが出始めている。 債券から株式への資金シフト、いわゆるグレートローテーションである。