2007年8月に、フランスの大手銀行パリバが証券化商品の新規受け付けを停止した。 時をおかず、米国でサブプライムローン問題が発生した。 それが、世界的な金融バブル崩壊の引き金となった。
先進国中心に多くの金融機関は天文学的な金額の金融取引にのめり込んでいて、それらの取引が大手投資銀行や銀行の間で複雑多岐に絡み合っていた。 金融バブルが崩壊したからといって、自行の単独判断で不良債権処理を進めるわけにはいかない。
複雑に絡み合った巨額の金融取引を、一つ一つほぐしていくには時間がかかる。 もたもたしている間に、世界の金融取引の地盤がじわじわと沈下していった。 そして、遂にというか最初に値を上げたのが、米国の大手証券会社のリーマンブラザーズであった。
2008年9月のリーマンブラザーズの倒産が、金融バブル崩壊を世界に知らしめるダメ押しとなった。 それまでは、先進国の大手金融機関の間で深刻な事態に陥っていたぐらいだったものが、いよいよ世界経済にも悪影響を及ぼしはじめたのだ。
これはまずいということで、米国やヨーロッパの政府中央銀行が動き出した。 とにかく大手銀行などの金融機関の連鎖倒産を阻止しなければならないし、景気の落ち込みも防がなければと、未曽有の金融緩和政策に踏み切った。 政策金利もゼロに近い水準にまで引き下げた。
一歩間違えると大変な事態になりかねないということで、世界のマネーはリスク回避に走り、最も信用力の高いと信じられている米国債に雪崩れ込んでいった。 それで、米国債の10年物が2年前には1.38%という史上最低の利回り(価格は最高値)を記録するまでに買い上げられた。
そういった状況だったから、世界の株式市場は大いに割りを食らった。 金融バブル崩壊といっても、それは投資銀行や大手銀行の間の問題であって、株式市場にそれほど影響が及ぶいわれはない。
しかし、世界のマネーはリスク回避を何よりも優先した。 となると、株式よりも債券とりわけ米国債だとなる。 そのうち、新興国はじめ世界経済にも悪影響が及びだしたので、株価全般はさらに売られた。
さて、ここからが今日の本題である。 金融バブル崩壊の泥沼から這い上がろうとする動きが、世界全体で徐々に強まってきている。 とりわけ先進国のグローバル企業や米国の一部の大手金融機関の立ち直りが顕著となってきた。
それを先取りしているのが、先進国の株式市場である。 米国株やドイツはじめ欧州の株式市場が史上最高値更新に入っているのが、その象徴である。
もっとも、回復のトレンドといっても、まだ一部の現象でしかない。 それは当然のこと。 世界の金融バブル崩壊だ、全面的な立ち直りにはまだ数年以上はかかる。 ただ、株式市場の先見性からして、景気や経済の全面復調をのんびり待つなどしない。
いつの回復時でも、こういった株価先行はみられる。 また、その過程で多くの企業や金融機関は脱落していくが、その辺りも株価は読み込んでいく。
われわれ長期投資家は、この動きを早々ととらえなければならない。 将来の明るいところ、それが今は小さくても構わないから、のみを見据えて積極買いに入ろう。
この動きが日本株市場では皆目見られない。 だから、米国やドイツ株市場に大きく後れを取っているわけだ。 逆にいうと、日本株には大きなチャンスが眠っているのだ。