運用のプロが育たない?

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 昔から、日本ではなかなか投資運用のプロが育たないといわれ続けている。 ひとつには、機関投資家がどこも会社の一社員として運用の仕事を与えており、早ければ3年ぐらいで他のポジションに定期移動させる。

 どんなに長くても5年とか7年で運用の仕事から離れてしまうわけで、海外の20年30年の経験を誇る運用者たちと比べると、日本の機関投資家全般にプロとしてのレベルはどうしても見劣りがする。

 そこで、少しずつ高まってきているのが、投資運用という専門職を会社の人事体系から切り離す動き。 採用も報酬も別にして、文字通りの運用のプロを育成していこうとしているわけだ。 その方向や良し、されど道は険しである。

 まず、優れた運用者を外部から引き抜いたり、採用の門戸を広く開放するといっても、思ったほど成果は上がらない。 理由は簡単で、職を求める方はできるだけ良い条件を獲得しようと、過去の運用成績をひけらかす必要がある。 なおかつ、入社後もできるだけ短期間に自分の存在を認めさせるためにと、相当に無理した運用にシャカリキとなる。

 そういった連中は、いつでも次のオファーを狙って虎視眈々としており、さらに良い条件が舞い込めばさっさと移っていく。 そこに、構造的な問題がある。 これは、運用のプロが多いといわれる欧米で日常茶飯事となっていることだ。

 どういうことか? 彼らはとにかく目先の成績数字を積み上げることにプロ意識を燃やすから、その意味では運用のプロである。 しかし、その目的は ”しばらくの間、抜群の成績を叩き出して、より良い条件を他社からオファーしてもらう” ところにある。 そのため、彼らが去った後のポートフォリオはズタズタになっていたというケースが、それこそ星の数ほどある。

 もちろん、そういった ”運用のプロ” を間近に見ていた若い連中は、自分も将来ああなって次々と高給をオファーされる立場になりたいと思う。 かくして、顧客資産を長期的に最大化させようとする職業意識などこれっぽっちもない運用屋たちが大量生産されることになる。 欧米の運用のプロといっても、こんな連中がゴロゴロしているのを忘れまい。

 じっくり腰を据えて、長期的に素晴らしいポートフォリオを構築していこうとする本物の運用者に出会えたら最高である。 残念ながら、高給目当ての運用屋たちが圧倒的に多いのが世界の現実である。

 そこで、さわかみ投信では運用センスがあると思える人間を1から育てる方針を貫いているわけだ。 もし、さわかみファンドで運用の仕事に携わりたいという人間がいるならば、その人は一般的な運用の世界の常識はすべて捨ててもらい、さわかみの投資哲学や理念を徹底的に学んでもらう。

 間違えても、高給欲しさで目先張りの運用なんてことは、絶対に許されない。 良い世の中をつくっていこうよと言っている、さわかみグループにおいて、自分の利益や栄達を主眼に置く人間は居場所がない。 運用会社における当然の倫理観である。