日本株市場は誰が主役か?

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 どうも煮え切らないのが日本株市場である。 主体的に行動できる投資家が少なすぎる中で、相場を追いかけては相場に乗ることしか念頭にない投資家もどきだけが跋扈している。 そして、結局は相場に振り回されてはおろおろするから、日本株市場は一向に腰が定まらない。

 投資家もどきを銭ゲバ投資家と言い換えてもいい。 なにしろ、彼らは株式市場でうまく儲けよう、1円で多く値ざやを稼ごうと、眼をギラギラさせるばかり。 上昇相場には慌てて飛び乗ってくるが、下げ相場となると蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 自分の投資スタイルとか、なんのために投資するのかなどは、まったく無視。 ただただ儲かれば良しで、株式市場に出たり入ったりを繰り返す。 われわれ長期投資家が企業を応援しようと、皆が売っている時に買っていくのとは大違い。

 いっておくが、個人投資家だけの話ではない。 機関投資家もほとんどがこの類いと考えていいだろう。 その証拠に、彼らのどれほどが下げ相場や長期低迷相場でさっさと主体的な買いを入れられるか、これまでの行動を洗ってみれば歴然である。 投資の理論やテクニックでは世界に引けを取らないし、情報もたっぷり持っているのに自分からは買いに行けない。 ひたすら海外の投資家が日本株を買いに来るのを待つのみ。

 この現象は60年代半ばころから顕著になっていった。 企業の間で、企業と銀行との間で、株式の相互持ち合いが本格化していったのと歩調を合わせて、日本株市場は下値が岩盤の上昇相場に入っていった。 なにしろ、企業や銀行それに生保が日本株をどんどん買い増ししていき、ピークの1988年の3月末には東証1部上場銘柄の全発行株数の54%強を買い占めるまでに至ったのだから。

 下値が岩盤の上昇相場がずっと続くのなら、銭ゲバ投資家にとっては天国である。 いろいろな材料で株価が跳ねるのをみては飛び乗るだけで、値ざやを稼げるのだから楽なものである。

 持ち合いを進めていた企業や銀行そして政策保有で買い一方だった生保も、投資家としての意識は醸成されなかった。 自分たちさえ売らなければ日本株は下がるわけがないという傲慢さだけが強くなっていった。 その傲慢さが、80年代後半の株式投機バブルにつながったわけだ。

 90年のバブル崩壊から、日本株市場の歯車が逆回転を始めた。 持ち合いや政策保有の一方的な解消売りで、日本株は60%強の暴落と22年にわたる低迷に追い込まれた。 そうなると、銭ゲバ投資家の出番はない。 個人も機関投資家もおろおろと逃げまわるばかりで、むしろ下げ相場を加速させただけ。

 これが日本株市場の実態であろう。 世界最大の債権国であり、ダントツの預貯金残高を誇るのに、日本株市場の売買の60%強は海外の投資家のものといった歪んだ状況に甘んじたまま。 いつも書いているように、機関投資家の日本株投資ポジションは減っていく一途だから、もう放っておこう。

 出てこなければいけないのが、個人投資家である。 これだけ預貯金マネーを保有しているのだから、ほんのちょっと買うだけで自分たちが日本株市場の主役だということを実感するはず。 銭ゲバはしょせん相場ありきの人たち。 そうではなく、企業を応援して一緒に良い社会を築いていこうとする、本物の投資家がどんどん出てこなければならない。 それが日本経済の骨太な活性化につながるのだ。