8月の終わり頃から、オリンピックの東京開催が決まりそうだということで、株式市場はその先回り買いに入っていた。 株価は常に景気や企業の業績動向を半年から1年ほど先取りするものだが、今回もその面目躍如といったところだった。
オリンピックが7年後となれば、関連施設の建設から高速道路などのインフラ整備まで、巨額の資金が動く。 当然、ゼネコンはじめ建設会社にとっては仕事が増えるし、いろんな付随需要が横へ横へと広がっていく。
いまのところ株式市場は、そのあたりの関連銘柄を買うことで沸き上がっているだけだが、そのうち物色対象は驚くほどの広がりを見せるだろう。 後になったらわかるが、意外と普通の企業の株価も大きく水準訂正してしまったということになるはず。
別の見方をすると、いまは株式市場中心にオリンピック特需を騒いでいるが、いずれは ”日本の景気回復を加速させるきっかけになった” という表現がなされよう。 当然のことながら、われわれ長期投資家はいつもの応援投資に一層の気合を入れることだ。
いくつか例をあげてみようか。 安倍首相がブエノスアイレスの会場で強く主張したように、原発汚染水の恒久的な安全処理は国が大きく関与していくことになる。 海外から日本の安全性を注目されればされるほど、汚染水を超えて放射能汚染問題全般にも確固とした対策が求められるだろう。 風評被害など、2度と言わすわけにはいかない。
原発問題を最終的にどうするかまではいかなくとも、放射能汚染問題は完全にシャットアウトしなければ、オリンピック開催地の名に恥じる。 相当に大きな予算を計上しても、国民は十分に納得する。 この7年の間に、いろいろな新技術が導入されよう。
まだある。 海外からの観光客は東京だけに留まるとは限らない。 せっかくだからと全国あちこちへ足を延ばすことは大いにあり得る。 それを期待して全国の観光地を中心に受け入れ準備の投資が活発化しよう。 こちらは民間の資金も相当に動く。 それが国内観光にとどまらず、将来の輸出につながることも大いにあり得る。
たとえば、海外からの観光客を想定して洋式トイレを導入する。 東京ではもちろん地方でも、ウォッシュレットのトイレを体感した人達は自国へ帰った後に、地元のホテルはもちろん自宅にもウォッシュレットのトイレを入れたくなる。 日本での実体験を機に、そういった輸出品が飛び出てくるのだろう。
いってみれば、オリンピック開催は日本全国が展示場になるということだ。 海外からの観光客はただ各地を訪れて温泉に入って帰るだけではない。 いろいろな日本の文化や技術にふれてもらう絶好のチャンスである。 このチャンスをどう生かすかに経営のセンスが問われるし、思いがけない企業がオリンピックを機に大きく翔ばたくことになろう。
長期投資家にとっても面白くなってきた。 しっかり世の中の動きを観察し、どのような展開となっていくかをしなやかに感じ取って、早め早めの行動あるのみ。