先週の木曜と金曜で愛知県の北部へ行ってきた。 従兄が持っている山を見に行くのが目的。 予想では人工林が荒れるままに放置されているはず。 それをどう自然の森に戻していくかを考えてみようということだった。
完全に予想が覆された。 従兄がきちんと枝打ちや間伐をしてきたとのことで、明るくて下草や低木を従えた、いかにも健康そうな杉とヒノキの森に育っていた。 十分に間伐してあるので、この先すばらしい大木の森になっていくのだろうなと容易に想像できる。
明るいというのは、戦後の植林政策で日本中に杉やヒノキを植えまくったが、そういった人工林は押しなべて暗い。 50年60年たって杉やヒノキは大きく育ったが、人工林の多くは輸入材に押されて建築用材としての役割を果たすことなく放置されてきた。 その結果として、暗い森や山林が日本中いたるところで荒れるがままとなっている。
杉やヒノキは建築用材にするため、まっすぐ伸びてもらいたい。 まっすぐ伸ばすには、はじめは密集して植林し、育ちをみながら下の方を枝打ちして上へ上へと大きくしていく。 大きくなるにつれて間引きの間伐を繰り返し、残す木々をより太く立派に育てていく。
ところが、杉やヒノキを手間暇かけて育てても採算に合わないということで、枝打ちも間伐もせずに放置されたままの山林が日本中あちこちにある。 そういった森は暗くて不健康そのもの。 杉やヒノキは常緑樹で、年がら年中びっしりと葉が茂っている。 それが高木となるから、地面まで陽の光が届かず下草も生えない。
すると、下草や低木の広葉樹も育たないから、枯れ葉が落ちてそれが土壌をつくっていくという自然作用が全く働かない。 降った雨の保水力も弱い。 面倒なことに杉やヒノキは根が浅い。 山林土壌の保水力が弱く植栽の根が浅いと、どうしても土砂崩れを起こしやすい。
そこで、人工林に手を入れてやって健康な森にしていく活動が必要になってくる。 密生して大きく育った杉やヒノキの森を間伐して、ともかく陽の光を入れてやることだ。 陽が差し込むようになると、放っておいても下草や低木の広葉樹が育ってくる。 つまり、自然の森に戻っていく。
間伐のひとつとして、さわかみ財団が NPO 法人 ”森のよみがえり” から学んだのが、立ち木の樹皮を剥いで立ち枯れさせていく方法。 間引きをしようとする木々の樹皮を下から数メートル剥いでやると、自然に立ち枯れして枝葉も落ちていく。 その過程で、森に陽が差し込むようになり下草が生えてくる。
立ち枯れした杉やヒノキは、2年もすると含水率20%ほどとなる。 びっくりするほど軽くなるので、建築材料として山からの搬出も楽になる。 これによって、山の再生を図っていきたいものだ。
自然の間伐や立ち枯れ手法を使い分けて、日本の暗い山林を明るく健康のものに戻していく。 戦後の植林政策を無責任なまま放置するのではなく、自然環境を大事に守っていくのは、日本人一人ひとりの後世に対する責任である。
できるだけ多くの人々を巻き込みながら、美しく豊かな日本の自然を守っていく活動を、さわかみ財団は高めていこうとしている。 9月からは、リニューアルされた財団のホームページでボランティアを募集しますので、ふるってご参加ください。