アベノミクスを強力に下支えしようとしているのが、黒田日銀総裁による2年後に2%のインフレ目標である。 そのためにはと、異次元の金融緩和政策を発表しかつ実施している。
異次元の金融緩和策の目玉は、長期債を含む国債の大量買入れである。 日銀が市中から国債を毎月5兆円を超す金額で一方的に買い上げていけば、それを売った金融機関は得た現金で企業融資や海外投資を積極化させるだろうという読みだ。
企業融資にどんどん資金が回れば、経済活動を活発化させる原動力となる。 金融機関が海外投資を積極化させれば、それが円売りにつながり円安効果を期待できる。 それらのどちらも、景気回復につながりデフレ克服にもなる。
政府や日銀の思惑通りにいくと、経済成長率は高まり、デフレ脱却も見えてくる。 その期待で、株価が先行上昇してきたわけだ。 ここへきての株価下落は、急上昇してきたことのスピード調整と考えていい。 しばらくは根固めの乱高下が続くかもしれないが、そのうち上昇トレンドに戻っていくのだろう。
デフレ脱却も景気回復も国民の皆が望むところ。 したがって、アベノミクスはよほどのことがない限り、着々と効果を上げていることになろう。 また、円安で輸入価格の押し上げはすでに現実化しつつあり、デフレ脱却どころか物価上昇も期待から懸念材料に代わっていくことも考えておいていい。
そして、その先は? われわれ長期投資家は常に先の先までいろいろ推測し、早め早めの手を打つことを心掛ける。 したがって、もう今の段階から2%のインフレ目標が達成される頃を想定した行動に入っていく。 2年後に2%のインフレ目標ということは、すぐ先のこと。 もたもたしてはおれない。
具体的には、どう考えられるか? まず、2%のインフレ目標が見えてくると、長期金利が現在の0.8%台にとどまっているはずがない。 2%はおろか3%前後にまで上昇するのが普通である。 先週、長期金利が1%に跳ね上がっただけでも、あれだけの騒ぎとなった。 それが、2%から3%に上昇してくるや、相当な混乱が金融市場に発生しよう。
いくら日銀が国債を大量購入するといっても、金融機関はそれをはるかに上回る量の国債を保有している。 大量保有している国債が、長期金利の上昇に伴って値下がりが加速すると、大きな評価損が発生する。 それは困ると、保有国債を売りに走れば国債価格の値崩れと、長期金利のさらなる上昇を引き起こすことになる。
おそらくだが、ひとたび国債売りが広がったら、ちょとやそっとでは収まらないだろう。 それに準じて、長期金利は4%5%と上昇していくことになろう。 もっと高くなってしまうこともありうる。
次に、経済の現場でも2%のインフレ目標が、それなりの影響を及ぼし始める。 たとえば長期金利が3%ぐらいにまで上昇してくると、それに耐えられない企業が続出しよう。 いつの景気回復でもそうだが、不況時よりも回復初期の方が企業倒産はずっと多くなる。 それは、金利が上昇するからだ。
もちろん、全体方向は景気回復であり成長率の高まりである。 企業倒産が増える一方で、業績を大きく伸ばす企業も続出する。 われわれ長期投資家の出番は、いまよりはるかに多くなるわけだ。