キプロスショックといわれるが

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 ユーロ圏の財政と債務の問題が、またぞろ表に出てきた。 ギリシヤ、アイルランド、スペイン、ポルトガル、イタリアに続き、今度はキプロス政府がユーロ圏から約100億ユーロの財政支援を受けるためにはと、預金に最大9.9%の税金を一回限り課すと発表した。 発表を受けて預金者は銀行窓口などに殺到した。 金融不安の再燃を危惧して、ユーロは大きく売られた。

 今日の日経新聞によると、キプロスの銀行資産は国内総生産 (GDP)の約8倍と、欧州連合平均の3.5倍を大きく上回るとのこと。 それだけ国外からの預金者が多いということであり、以前からマネーロンダリング(資金洗浄)にキプロスの銀行が利用されていると指摘もある。 したがって、預金課税は一定額以上の高額預金にのみ課せば良かったのに、一般市民の間で無用な不安と混乱を招いてしまった。

 キプロスの経済規模はユーロ圏の0.2%と小さく、わざわざキプロスショックと大騒ぎすることでもない。 それでも、投資家の反応は十分すぎるほどに過剰である。 毎度のことながら、日本の金融機関や機関投資家は海外の悪材料に敏感で、すぐさま株売り債券買いに走った。

 まあ、300円を超す平均株価の下落も、新発10年物国債利回りが0.585%への低下も、日本ならではの過剰反応である。 株式市場にとっては、ちょうど良い値固めともなった。 先物中心に売られたりで、付和雷同の投資家がふるい落とされることは、次の上昇相場がより腰の据わったものになるためにも、大いに歓迎である。

 もちろん、どさっと下げたところはどんどん買っておこう。 株価の上昇トレンドに乗って、米国や日本の経済が上向いていけばいくほど、ユーロ問題はローカル化していく。 ユーロ圏の銀行債務問題は相当に時間をかけて、ゆっくりほぐしていくしかない。 そのためにも、米国や日本が早く元気になることが問われる。 こういったときにも、長期投資家の役割がどれだけ大事か認識を新たにできよう。

 

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