長期投資の真価

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 昨日はある大会社の労働組合向けのセミナーがあった。 100名近い参加者のほとんどは投資の経験がない方々だった。 これは都合いい、初めから本格的な長期投資というものに踏み込んでもらえる。 長期投資は将来に向けてお金をまわしてやることだよ、良い世の中をつくっていくことだよ、投資のリターンは後からついてくるものだという点だけに絞って説明した。

 そうか、投資とか長期投資ってそんな簡単なことか。 自分がまじめに働いて生活しているように、お金にも身近なところでゆっくり丁寧に働いてもらうことか。 自分だけお金を殖やそう殖やそうとせず、世の人々が豊かになる方向で働いてもらうことか。 生活者に好かれと願う方向で経済が拡大発展して、その分け前として戻ってくるのが、投資のリターンなのか。

 だったら、長期投資やらない理由ないじゃないかということで、多くの人が納得してくれた。 ほんのちょっとでもいいから、第一歩を踏み出してもらえたら、あとは実感で長期投資のすごさや面白さがわかってくるはず。

 よくある投資教育や機関投資家の運用では、お金をどう殖やすか、どうリスクを避けて運用するかといった点が中心となる。 いってみれば、資金運用の理論やテクニックばかり。 毎年どのくらい効率的にお金を殖やせたたかを競い、その積み重ねでもって財産づくりが進むと考えるのは、一見もっともらしいが長期的には危険である。

 早い話、いま利回りが0.6%の10年もの国債を買って、一体どれだけの財産となるというのか。 100万円が10年後には106万円ちょっとにしかならない。 10年の間に物価が10%上昇したら、もう手も足も出ない。 財産づくりどころか、購買力の維持すらできないではないか。

 ところが、年金をはじめとして機関投資家は長期国債をガンガン買いまくっている。 最近の円安や株高で、海外物運用や日本株投資の資産評価が高まり、運用資産全体でみると国債の投資ポジションが相対的に下がってきた。 そこで、あらかじめ定めていた投資ポジションまで調整しなければならないと、海外物や日本株を売る一方で国債を買い増ししているわけだ。

 そんなことやっていて、10年後20年後の年金資産に責任を持てるだろうか。 そこまでデフレが続くこともない、むしろ景気回復で長期金利は上昇していよう。 われわれ長期投資家は、こんなところで年0.6%にしか回らない国債を買うなんて絶対にない。 一方、株式投資ポジションを100%に引き上げて景気回復をサポートして、長期のリターンの積み上がりを楽しみにする。

 世に一般的な資金運用と、われわれの本格的な長期投資との違いは、10年もしないうちにとんでもない成績の差となっていよう。

 

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