経済なんてものは、人々の毎日の生活と、それを支える企業の生産・供給活動で、その大半が成り立っている。
かつて高度成長期には、人々がより豊かな生活を実現させようと、欲しかった家電製品などを片っ端から買っていった。
国民の皆がどんどん買うから、企業は生産および供給体制を高めようと、設備投資に邁進した。
一般生活者も企業も、すごい勢いでお金をつかったわけだ。 それが、日本経済の拡大発展につながっていった。
その日本経済だが、90年代に入ってから今日まで34年間も低迷とジリ貧を続けている。
低迷ジリ貧の最大要因は、もうこれといって買うものがなくなり、人々がかつてほどお金をつかわなくなったからだ。
すると、企業の方も設備の拡大投資を控えたり、むしろ供給力を縮小しようとする。
このどちらも、お金をつかわないという点では一致していて、その分だけ経済活動が縮小する。
それを、経済の成熟化という。 人々の間で、家電製品など買い替え需要が中心の生活パターンにシフトするわけだ。
そういった成熟経済で成長率を高めるとしたら、国民が意識してお金をつかう文化を醸成していくしかない。
もう、生活に必要なモノはほとんど満たされたから、今度はモノを超えたお金のつかい方を学ぶことだ。
その点、日本人は明治の頃から、4つの心構えを徹底的に叩き込まれてきた。
すなわち、「真面目に働く」「必要のモノは買っていく」「ムダ遣いはしない」「余ったお金は貯金する」だ。
この4つの教えが完璧に機能して、明治期の勃興や戦後復興そして高度成長が実現した。
ところが、いまや必要なモノはそろって、お金をつかわないから経済は伸びず、いくら真面目に働いても所得は増えない。
その一方で、相変わらずムダ遣いせず、預貯金だけはどんどん貯め込んでいっている。
この、「ムダ遣いはしない」「余ったお金は貯金する」がガンとなって、日本経済は長期低迷しているわけだ。
ちなみに、この34年間で積み上がった個人の預貯金マネーは、600兆円を超える。
これだけの資金が、かつてのように経済の現場にまわっていたなら、どうなっていただろう?
それだけで、単純計算ながら日本経済は年平均3.3%の成長をしていたはず。
今頃、日本経済の規模は2.6倍強となっていて、それだけ国民の所得も増えていただろう。
なんとも惜しい話である。 とはいえ、いまからでも遅くはない。
1000兆円を超える預貯金マネーを持っているのは、日本人一人ひとりだ。
意識して、どんどんお金をつかうべしである。