江戸っ子の「粋」を表す言葉のひとつに、「宵越しのカネは持たねえよ」というのがある。
今日稼いだお金は、お隣さんや近所を集めて、飲んで食ってきれいサッパリとつかってしまう。
そういった「粋」な生活の中に、経済で大事なことが一杯つまっている。
一日たっぷりと汗を流して働く。 身体のみならず頭にもしっかり働いてもらって、収入を得る。
働いて収入を得るのは生きていく上で当然のことであり、経済活動の原点でもある。
そういった労働で得たお金を、江戸っ子はきれいサッパリ、つかってしまうという。
つまり、消費として1銭も無駄なく、経済の現場にお金を還流させるわけだ。
その消費が、お金を受け取った人の収入となって、次なる消費にと向かっていく。
どれもこれも、経済の拡大再生産につながっていくことになる。
また、隣近所の人を呼んで飲んだり食ったりすることで、富の再分配が進んでいく。
これまた、経済活動にとって大事なことであり、経済のみならず社会に安定につながっていく。
この江戸っ子の粋を、現在の日本社会に照らし合わせてみると、ウンザリさせられる。
どういうことか? 相変わらず日本人はまじめに働いている。 そして世界的にみても高度な消費生活を享受している。
しかし、その横で預貯金残高をどんどん積み上げるばかりで、お金をつかわない。
それが、個人消費の低迷となっているし、富の再分配もさっぱり進まない。
結果として、日本経済を長期の停滞と低迷に追い込んできている。
1000兆円を超す預貯金の、たった3%でも経済の現場にまわっていけば、どうなるか?
文化・芸術・教育・スポーツ・寄付・NPO・ボランティアなんでもいい、お金をつかうのだ。
つかわれたお金は、それを受け取った人たちの収入となり、消費へとまわっていく。
それだけのことだが、日本経済は瞬間に5%成長の軌道に乗ってしまうのだ。
経済が5%も成長すれば、まわり回って人々の収入、つまり国民の所得は増えていく。
また、お金がつかわれた先で新しい産業が生まれ、雇用も拡大する。
国民の皆にとっても嬉しいことばかりで、なお社会の安定にも直結していく。
もし、抱え込んでいる預貯金の10%が経済の現場にまわれば、どうなるか?
国家予算と同じ規模の資金が民間から流れ出してくるわけで、とんでもなく巨額の経済活性化資金となっていく。
このあたり、国民の間で共有認識となっていけば、日本経済も社会もあっという間に輝きを取り戻すのだが。