1980年代後半のバブルが弾けて28年たったが、日本経済はどんどんおかしくなっている。
長期低迷やらデフレ現象やらで、国民全般の生活水準はまったくといっていいほど向上していない。
それでいて、政府や学者は戦後最長の景気拡大が続いているという。 その実感が、さっぱり湧いてこない。
たしかに、雇用状況だけみると、失業率は歴史的な低水準にある。 それなのに、低所得者層がじわじわと広がっている。
労働力不足を補うためにと外国から安い働き手の導入にピッチを上げているものの、国民全般の所得向上にはつながってこない。
なにが、どこが狂っているのだろう? かつての英国病のように、日本も不治の病に侵されてしまったのだろうか?
ここに、へんてこな統計数字がある。 1060年の段階で、日本のGDPは20兆円ほどだった。 それに対し、個人金融資産は17兆円。
それが、高度成長期を経てバブル景気に沸き上った1990年の段階で、GDPは560兆円、個人金融資産が924兆円となった。
ここまでは、経済が成長し国民の生活が豊かになっていったという、まさに理想的な展開だった。
それから28年たった現在は、どうなっているか? GDPは一時500兆円を割り込んだが、アベノミクスでかさ上げされて550兆円まで戻ってきた。
一方、個人金融資産はなんと1830兆円にまで膨れ上がっている。(日銀速報、2108年末) うち、現金・預貯金額は984兆円に上る。
生活実感では、ちっとも豊かになっていないのに、金融資産は906兆円も増えている。
なかんずく、現金・預貯金額は1990年末の498兆円から486兆円も増加している。 率にして、98%増だ。
なんとも、おかしな現象である。 単純計算ながら、国民は毎年17兆円ちょっとずつ、お金を抱え込み続けたわけだ。
もし、この17兆円がかつてのように消費にまわされていたなら、この28年間ずっと3.4%の成長を遂げていた計算となる。
ということは、日本経済の規模は1400兆円ほどにまで拡大していたはず。 いまでも、中国経済といい勝負をしていたことになる。
どうして、こんなにも変てこなことになるのだろう。 ひとつには、一部の富裕層や高齢者層への富の偏在化だ。
とりわけ、高齢化の進展でお金を抱え込む高齢者省が急増している点が挙げられる。
高齢者層からすると、老後設計の柱として預貯金は手放せない。 できるだけ多く抱えておきたいとなるのは人情である。
もうひとつは、日本人に浸み込んでいる貯蓄信仰だ。 まじめに働き、無駄遣いはせず、余ったお金は貯蓄にまわす。
この生活信条が、日本経済の長期停滞と経済運営の迷走からくる将来不安で、ますます頑強となっている。
どうしたらいい? 国民に「成熟経済の活性化には、貯蓄信仰からの脱皮が不可欠」と訴え、モノ以外の消費を促すことだ。
毎日の生活を、より潤いのある方向にレベルアップさせるため、カッコ好いお金のつかい方をしようと、国民に訴えるのだ。
どうせ預貯金に置いておいても、ゼロ同然の利子しかつかない。 利殖どころではない。
それなら、カッコ好いお金のつかい方や長期投資でもって、経済活性化に貢献する方がよほど賢い。
なにもしなかったら? このままズルズルと日本経済は沈んでいき、国民はユデガエルになるだけのこと。
まあ、わかった人からどんどん動こう。 すくなくとも長期投資はやっておこう!