20年以上も前から、日本は金融立国ではなく運用立国を目指すべしと提唱してきている。
NYやロンドン、香港シンガポールに伍していける金融サービスを東京でも、というのが国や識者の意向である。
悪いけど、無理。 やめた方がいい。 勝てるわけがないし、三番煎じのお茶など誰も飲まない。
ありとあらゆる金融取引の場を準備し、瞬時の資金決済や移動の機能を売り物にするのが金融立国である。
そういったサービスを競ったところで、世界が相手となるとどうしても英語の世界。
そして、ひたすらマネーつまり数字を追い回す無機質の競争に明け暮れる世界で、情もなにもあったものではない。
そんな競争に飛び込んでいったところで、東京が断トツのトップとなれるとは思えない。
しかし運用立国、つまり投資運用をベースとして世界をリードするというのなら、いくらでもチャンスはある。
世界の運用ビジネスは1980年代に入ってからというもの、急速に資金運用へと傾斜していった。
マーケットでの価格変動を相手にして、いかに売買利ザヤを稼いでいくか、それが資金運用というものである。
年金をはじめとして世界の運用の大半は、毎年の成績を追いかけては運用資金を獲得しようとするマーケティングの支配下にある。
毎年の成績を追いかけるあまり、資金運用の世界にどっぷりと浸ってしまっているのが、NYやロンドンの株式市場である。
そこでは、ヘッジファンドやアクティビスト達が跋扈するし、短期の売買益を狙う投資ファンドが鈴なりとなる。
そんな短視野の利益追求、いわゆる株主の要求に世界の企業が振り回されているのだ。
一方、われわれ長期投資家はいつでも投資運用の世界にいる。 つまり、5年でも7年でもリスクを取って企業を応援する。
そういった5年7年の時間軸で投資できる株主がどんどん増えてくれたら、企業経営にとってどれほどありがたいことか。
それを東京でやってしまえばいい。 日本株市場で生活者投資家というか生活者株主の存在感がどんどん高まってきたら、どうなるだろう?
短期の運用利益につながる経営を強いられて、ウンザリしている世界中の企業が次々と東京株式市場に上場を求めてくるのは必至。
そう、なんの努力もなしで、東京株式市場が世界の長期投資運用のメッカとなってしまえるのだ。
この効果は絶大である。 世界のまともな企業が競って東京株式市場へ集まってくるし、世界の長期運用マネーも東京へ向かってくる。
当然のことながら、世界のファンドマネジャーやアナリスト、マスコミも東京詣でとなる。
金融立国とやらで勝てない競争に飛び込むよりも、運用立国で世界をリードしてしまう方が、よほどワクワクする。
幸い、日本には860兆円もの個人の預貯金マネーが眠っている。 公的年金の5倍以上の巨大な資金プールである。
預貯金マネーの10%でも20%でも長期の株式投資に向かわせることが出来たら、運用立国の実現も早い。