長期投資が本格普及していくと、経済はいくらでも成長する。 とりわけ日本のような個人の預貯金残高が経済規模の1.7倍にもなる国では、預貯金の10%でも長期投資に回っただけで、アベノミクスなど遠く及ばないほどの経済成長を達成できる。
そうはいうものの、日本経済は相変わらずのモタモタを続けており、長期投資なんて考えられないという人がほとんどであろう。 せっかく世界最大の眠れる資源ともいえる809兆円の預貯金残高を抱えて、いやはやもったいないことである。
そこで今日は、デフレ経済やゼロ成長であっても長期投資で財産づくりは進められる、そのところを説明しよう。 100万人ぐらいの人がこの長期投資家日記を読んで、なるほどと納得して長期投資に入って来てくれたら、それだけでも日本経済は驚くほどの成長軌道に乗っていくのだが。
では、はじめよう。 先ず、経済がジリ貧で企業の売り上げもさっぱり伸びないといった、とても投資できそうにない状況を想定しよう。 そういった中でも、われわれ長期投資家は人々の毎日の生活を支えてくれる企業に応援投資する。
生活者にとってなくてはならない企業であれば、毎日の生活消費で売り上げは立っていくし、そこそこの利益もいただける。 しかし、景気は悪いし利益成長もゼロと、まったく冴えない経済環境下にある。
それでもだ、応援する企業が売り上げも利益もゼロ成長ながら、なんとか6%の利益率で100円の利益を確保しているとしようか。 そこから36%の法人税など36円を支払っても、残りの64円は配当にまわしたり内部留保できる。 つまり、100円の利益のうち64円は株主の持ち分である。
その会社は、6%の利益率のうち3.84%にあたる株主の持ち分64円から、1.84%分にあたる30円を配当として支払い、残りの2%分にあたる34円を利益剰余金として株主資本勘定に繰り入れるとしよう。 これを毎年繰り返していくと、株主は30円の配当を得ながら34円の株主資本の積み増しを期待できる。
配当はともかくとして、毎年6%の利益率に対して2%分の利益剰余金繰り入れは、もう立派な投資価値の高まりである。 長いめで見れば、株価は投資価値の高まりを評価して必ず高まってくる。 それが長期投資による財産づくりとなっていくわけだ。
もっとも、利益成長がゼロで毎年34円ずつ利益剰余金つまり株主資本が膨らんでいくとなると、ROE 値つまり株主資本利益率はどんどん下がっていく。 それをみて、投資魅力は下がっているという向きもあろう。
ROE が下がっても構わない。 一株あたりの株主資本がどんどん膨らんでいいくということは、それだけ解散価値が高まっていくことでもある。 投資価値の高まり以外の何物でもなく、株価はどこかで必ず評価しにいくもの。
ここで忘れてほしくないのは、応援投資という行動である。 生活者からみてなくなっては困る企業を応援しようと、われわれ長期投資家は株価の安い時は断固として買い、株価が高くなってきたら薄く薄く売り上がっていく。
毎年すこしずつながらも投資価値を高めていってくれる企業に対し、安く買っては高く売る作業を淡々と繰り返していくのだ。 長いめで見れば、着実にかつすごい財産づくりができていくと思えないか。