投信のコスト

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 週末の日経新聞に、投信のコストについての記事があった。 もう長いこと指摘され続けている販売手数料の問題ではなく、今回は信託報酬を取り上げている。

 日本の投信業界は運用ではなく販売のビジネスとして長年やってきて、資産残高も100兆円を超えるまでになった。 といっても、世界では考えられない、いびつな形で発展してきている。

 運用ではなく、販売のビジネス? 毎週月曜日に日経新聞が掲載する、日本の主な投信の欄を見るといい。 どれだけ運用を放ったらかしにしているかがよくわかる。

 たとえば本日版をみると、日本を代表する大型ファンド46本のうち、基準価額が10,000円を超えているのが12本だけというお粗末さ。

 その中で、20,000円を超えているのが、さわかみファンドの一本のみ。 次が18,000円前後をウロウロしており、それ以外は10,000円ちょぼちょぼと褒められたものではない。

 それどころか、10,000円の基準価額で設定されたのに、いまや基準価額が6,000円台ならびにそれ以下のファンドが、なんと22本もあるのだ。

 こんな体たらくで、どの投信会社も運用ビジネスとして、よく恥ずかしくないものだ。 毎月分配しているから、元本を食いつぶして基準価額も下がっている。 そうと開き直るのは自由だが、それこそまさに販売優先を物語って余りある。

 さて、信託報酬の記事に関してだが、日経の記事には少し物足りない面がある。 信託報酬が安ければ安いほど、投資家顧客にプラスというものでもない。 その点が誤解されかねない。

 たしかに、インデックスファンドなどコンピュータ運用では、リサーチなどのコストはほとんどかからない。 したがって、信託報酬の引き下げ競争が激化の一途となるのは避けられない。 その面では、投資家顧客など受益者にとってプラスである。

 しかし、ひとつ忘れてならないことがある。 投信の信託報酬は毎日365分の1ずつ基準価額に織り込まれていっている。 したがって、目論見書にある信託報酬の利率を、ただやみくもに競うのは片手落ちもいいところである。

 早い話、さわかみファンドでは1%プラス消費税を信託報酬としていただいている。 一般のインデックスファンドと比べると、やや高めの信託報酬を設定していると、しばしば指摘される。

 表面上の信託報酬率をどうのこうの言う前に、基準価額の推移を比べてみるがいい。 インデックファンドには申し訳ないが、ずっと上を行っている。

 投資家顧客にとっては、どちらが本当にプラスか一目瞭然だろう。 こういったところを天下の日経新聞がきちんと指摘できないのは、日本に本物の運用が定着していない証左であろう。 記者にとって、取材できないのだから仕方あるまい。

 海外では、堂々と高い信託報酬つまり運用報酬を徴収しているファンドが結構ある。 運用成績が十分に高ければ、文句ないでしょうという論理だ。

 それも、ちょっと行き過ぎの感がある。 とりわけ、ヘッジファンドなどで高飛車に出てくるところが多い。 そういったところは、大体10年ほどで消えていっている。

 本当に顧客本位の良心的な運用会社は、そこそこの運用報酬率でしっかりと長期の投資運用を20年50年と続けるものだ。