3%成長、それでも財政は綱渡り

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 政府の財政運営の骨子が固まったようだ。 アベノミクスでもなんでも総動員して、日本経済の成長率を高める。 3%の成長ラインに達すれば、これ以上の財政悪化は避けられるという算段らしい。

 いかにも取ってつけた作文である。 来年の参議院選を控え、消費税の税率アップなど増税は避けながら、財政の悪化に歯止めをかけるということなんだろう。

 表向きは経済成長と財政の安定化を目指すようで、結構な政策方向に見える。 その実、将来世代への負担の先送りはずっと続くことになる。

 お題目の3%成長だって、そう簡単なことではない。 3%成長が達成できない場合、財政の悪化は加速することになり、政治の無責任というそしりは免れない。

 そもそも、成長戦略による国民の所得増加と、財政健全化は別問題として切り離すべきである。 それを一緒くたにして、選挙民におもねるから、問題の先送りが続くことになる。

 では、どうしたら良いのか? われわれは評論家ではない。 将来の日本に責任を持つ大人として、国として民間としてやるべきことを考えてみよう。

 第1に、アベノミクス登場の時から繰り返し書いてきているように、日本経済の成長拡大を促進するためには、アベノミクスの良い面にはトコトン悪乗りしよう。

 その最たるものは、株価上昇による資産効果である。 これは実際に表面化してきている。 日本の株価が15年ぶりの高値にまで戻り、それが心理的にも現実の富の増加としても、消費や企業活動に大きなプラス効果をもたらしている。

 第2に、消費税の税率を毎年2%ぐらいずつ引き上げ、できるだけ早く15%水準ぐらいにまでは持っていく。 返す刀で、法人税の引き下げを断行して企業活動の活発化を促す。

 消費税は社会保障税に名称変更して、全額を年金や医療費に向けるようにすれば、国民のほとんどは納得して10%でも15%でも負担を共有できるはず。 そこを固めてやれば、高齢者層はもちろん現役層も将来への安心感を高められる。

 それ以上に大事なのは、毎日の生活で社会保障税を負担しながら、国民の多くが無駄な医療費などの抑制に自発的な行動をとりだすことだ。 人間だれしも自分で払うとなれば、自制の気持ちが出てくるもの。

 法人税の大幅引き下げは、企業が税率の低い海外へ所得移転しようとする衝動を抑え、逆に海外企業の日本進出を活発化させる。 もちろん、国内での起業も増加する。 結果として、法人税収入額はそう落ち込まない。 むしろ、企業活動の活発化で法人税収額が増えることも。

 第3に、来年1月から始まるマイナンバー制度を徹底させて、税の取り漏れを一掃する。 年金の受け取り額や金融収入も含めた国民の所得状況がコンピュータ把握できるようになることで、公平公正な徴税が可能になる。

 生活保護費の不正受給はなくなる一方で、ワーキングプアといわれる人々への所得補てんは充実できる。 社会保障税が15%に引き上げられたとしても、軽減税率の導入など複雑な政策は無用で、低所得層へは現金給付で生活を安定化させられる。

 第4に、社会保障税の導入で年金や医療費問題は横へ置けるから、それ以外の一般財政は徹底的に絞り込む。 日本の財政綱渡りは危険水域にある。 一刻も早く解消に向かう断固たる覚悟と方向性を明示しないと、大変なことになる。

 新著にも書いたが、マーケットが見限った時は国債の暴落と長期金利の急上昇は、大津波となって押し寄せてくる。 そうなったら、もう誰も止められない。

 今日は第2水曜日。 18時5分からインベスターズTV で生放送。 好例の質問の時間への参加、大歓迎ですよ。