予算のバラ撒きと経済成長

Browse By

 来年度の予算が決まった。 いよいよ100兆円を超えるのではといわれていたものが、史上最高となった今年度予算からは0.3%増えただけで、なんとか96兆円台に収まった。 税収の増加もあって、国債発行による予算補填の比率は6年ぶりに40%台を割り込んだ。

 財政健全化に一歩踏み出せたと政府は自賛するが、予算の36%強は国債発行で賄っているのが現実。 先進国で断トツに悪い財政状況に変わりはない。

 その中で、年金など社会保障費の税補てん分と国債費を合計すると55兆円になるが、その負担は年々増加する一途である。 なにしろ高齢化の進展と、毎年40兆円を超す国債の発行残高の積み増しがあるのだから。

 96兆円から55兆円を差し引いた44兆円が、一般的な予算として各省庁に振り分けられる。 どの省庁も予算獲得の意義と必要性を主張するが、いわゆる予算バラ撒きの源泉ともなる。

 ここで考えたいのは、予算の無駄遣いは御免蒙るが、よくいわれる予算バラ撒きの経済効果である。 それが経済成長につながり、広く国民に豊かさが及ぶのであれば、いくらでもバラ撒けばいい。 なぜなら、バラ撒いた予算は経済のパイを拡大させ、最終的には税収増加となって国庫に戻ってくるのだから。

 ところが、その効果がさっぱり出てこないとなると、やはり問題である。 ちなみに、1992年9月の総合経済対策から始まって20年ちょっと、毎年に平均すると19兆円強もの景気浮揚予算を計上している。 

 その結果はどうかというと、日本経済はじり貧の道をたどったままパイを縮小させてきている。 単純計算しても、年平均3.6%ぐらいの成長はしていておかしくない予算投入だった。 それが、まったく効果を出していないのだ。

 経済拡大効果がさっぱり出てこないのは何故なんだろう? バラ撒きを含め予算投入が、どれもこれも後ろ向きだったからだ。 不良債権処理から始まって、ゾンビ企業の救済まで、新たなる富を生み出す方向で予算が投入されたわけではない。 むしろ、税でもって食っている人たちを増やしただけである。

 ここに、アベノミクスに限らず歴代政権による景気対策や成長戦略の限界がある。 いくら予算を投入しても効果が出ないのなら、政策の方向を変えるべきである。

 すなわち、一般予算は役所が必要最小限の公共サービスを続けるだけに削り落とし、余った分は10兆円を残して圧縮してしまう。 残した10兆円は、政府がこれぞ成長に寄与すると考えるところへ直接投入する。 結果を出せなければ、政権を変えるだけだ。

 大事なのは、役所に成長戦略など担当させないこと、そんなこと役所の仕事ではない。 経済を活性化させる政策と方向を打ち出すのは、その時の政権が担う役割である。 そこのところをはっきりさせると、日本の政治家にも経済感覚というものが備わってくる。