この数年、地政学リスクという言葉があちこちで語られるようになってきた。 もともと地政学とは、地理的条件がどのように経済や政治あるいは社会に影響を及ぼすかを学ぶことである。
それは、国家間のみならず民族間や宗教上の諍いをも含んでおり、まさにパワーポリティクスの源泉とでもいえよう。 とりわけ陸続きの地域では、あらゆる力関係のせめぎ合いを地政学リスクと表現している。
どうして最近になって地政学リスクという言葉が頻繁に登場するようになったのか? いろんな言葉が流行に乗るが、地政学リスクもその一つぐらいに考えていい。 なにしろ、ひと昔前まではズバッと、パワーポリティクスと言っていたのだから。
あえていうなら、東西の冷戦が終結して米国の一強支配が確立したと思いきや、イラク戦争やアフガニスタン紛争の泥沼化で世界最強の地位がグラグラしてきている。 そこへ、オバマ大統領の弱腰外交が米国弱体化の印象を強める働きをしている。
そうなってくると、世界中あちこちで力のせめぎ合いや紛争めいたものが噴出してくる。 その状況をとらえて、マスコミ的には地政学的リスクと喧伝しているわけだ。
言葉上のあれこれは横へ置いて、基本は経済力である。 民族的宗教的に強固な結合や、優れたリーダーの下での団結力も、長期的には経済的な力量の差は如何ともしがたい。
いま日本では、竹島問題や尖閣列島問題をどう解決していくかが、政治や外交上かなり大きなテーマとなってきている。 隣国からの圧力が強まっているのも、韓国や中国が経済的実力を高めてきたからのものといえよう。
どうすれば良いのか? 政治や外交手段はいろいろ講じられようが、何はともあれ日本の経済を立て直して、圧倒的な経済力を世界に誇るところまで持っていくことだ。
この20年余、日本経済がジリ貧と長期低迷にあえぎ続けていた間に、韓国や中国経済は一気にのし上がってきた。 その勢いが日韓中3国の力関係にも表面化してきているわけだ。 この段階で問題解決を急ぐと、政治外交交渉の手持ちカードにも自ずから現在の勢いが反映されてしまう。
よほどのことがない限り、ドンパチまではいかないだろう。 その間に、一刻も早く日本経済の実力を高めるのだ。 韓国にしても中国にしても、いろいろな問題を抱えているのだから、今の力関係がずっと続くなんてことはないのだから。
日本は少子高齢化で人口も減っていく? それを言い出した瞬間に、世界中で日常茶飯事となっているパワーポリティクスの餌食になるのだ。 他国の言うがまま、貪られるがままが嫌だったら、経済的実力を高めるしかない。
幸い、日本には世界有数の工業力と高い技術、そして GDP の1.7倍もの個人預貯金がある。 その潜在力をどう発揮させるか次第だが、そうそう隣国に引きずり回されることはないはず。