町興しの活動と長期投資

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 日本中あちこちで、町興しの活動が活発に行われている。 地元を自分たちの手で元気にさせようじゃないかといった意思と意欲が、いろいろな活動となって表れてきているわけだ。 結構なことだし、そういう活動は大いに盛り上がってもらいたいもの。

 もともと、地元の人々の生きていこうとする活力が集まって、地域経済や社会が成り立っている。 その活力が強いところほど、活気のある町や村となっている。

 一方、将来に見切りをつけて若い人たちが地元を捨てて都会へ去っていくところは、どんどん過疎化していく。 地元に残ってもこれといって仕事もなく、どうやって食っていくか目途が立たないから仕方ないといった経済的な面が強い。

 とはいえ、過疎化が進んだり高齢化で人口も減っている地域ながら元気あふれるところもある。 残っている人たちの工夫と努力で、経済力を高め豊かに生活していっているわけだ。

 よく話題に上るのが、四国は徳島県の山奥のおばあさんたち。 都会の料亭や高級料理屋で魚や料理の盛り付けに添える葉っぱを、自分たちの手で摘んで出荷し結構な売り上げをあげているのだ。 パソコンやインターネットを駆使して、いま一番需要のある葉っぱを選んでは山で摘んでいるから、出荷値も高くそれだけ利幅も大きい。 聞くところでは、1千万円の年収を誇るおばあさんたちもいるそうな。

 そこで町興しに戻るが、大事なのは地元の人たちと地元の資金をフル活用することだろう。 よく企業を誘致したり観光で食っていこうとするが、その地がよほど条件に恵まれていないと見果てぬ夢となってしまう。 企業の進出にしても観光客にしても、お金を払うに見合うだけのものが期待できるからこそ、その地へ行こうかとなる。 

 お金を払う方の利益計算や満足感は差し置いて、どれだけ企業誘致や観光パンフレットに予算を投入したところで徒労に終わるだけである。 わかりきったことだが、その辺の発想から抜け切れない人たちの多いこと。

 そんな徒労を重ねるよりも、地元の人たち自身が動き、自分たちのお金をつかう方が、よほど確かな計算ができる。 地元経済を活性化したいのは自分たちなんだから、自分たちのお金をつかえばいい。 地元でお金をつかえば、そのお金はぐるぐる回って、結局は自分たちに戻ってくる。 それで地元経済が元気になれば文句ないはず。

 その典型例が、被災地の復興である。 中越大地震の時でも今般の東日本大震災でも、被災地支援のカンパやボランティアはそう長く続かない。 また、国の復興予算も恒久的ではない。 やはり、地元の人たちが自分たちの経済社会を取り戻すべく、自助努力を重ねるのが一番となる。 厳しいこと言うが、それが現実である。

 とにかく地元の人間が動こうぜ、いろいろ面白いことやって、それに地元の資金を動員しようぜ。 そういった自助の精神あふれる動きが出てきているのも事実。 彼らの独立自尊の町興し活動に、なにかお手伝いさせてもらえることがあればということで、さわかみグループも動き出している。

 お手伝いの中で、いずれ判ってもらえるだろうなと確信していることがある。 それは、地元経済活性化に長期投資をかましてくれるようになると、町興しが自己完結できるということだ。

 地方の人たちが長期投資で自分年金づくりを進める。 その横で、地元経済活性化にちょっとずつでもお金をつかうようにする。 そのお金は地元でぐるぐる回って、間違いなく地元の人たちの収入になっていく。 そのうち、長期投資で殖えたお金が加わってくることで、地元経済のパイはどんどん自己増殖しながら、拡大発展のピッチを上げ始める。

 そんな風にうまくいけばと思われるかもしれないが、この長期投資家日記にいつも書いていることを全部つなげてもらえば、きわめて現実的な考えだと納得いくはず。 要は、やるかやらないかであり、少し時間がかかるだけのことである。

 来週の月曜日と火曜日は予定がびっしりで、お休みです。 日曜の午前中は、茨城県の大洗町でお会いしましょう。