この20年余り、先進国中心にすさまじい金融緩和が、これでもかこれでもかと深掘りされてきた。
その結果、金融マーケットは実体経済をはるかに凌駕した規模にまで大発展した。
それに伴って、一部の少数者へ金融所得を中心とした富の集中が、異常なまでに進んだ。
その横で、多数国民の低所得化や貧困化が、米国はじめ先進国においても深刻な社会問題となってきている。
こういった現象の行き着く先は、食えなくなった人々による暴動の頻発など社会不安と地政学リスクの高まりである。
さすがに米国など先進国においては暴動とまではいっていないが、極右勢力の台頭などが顕著となっている。
今年は選挙の年といわれ、トップバッターとして来週からトランプ第2期政権がはじまる。
彼の思い付き発言(?)の連発は、マスコミ報道にとって格好の題材となっている。
どこまで本気なのかは知れないが、世界にとっては大きな混乱材料を次々と振りまいてくれているのは確か。
それが、2月のドイツ総選挙や、6~7月の参院選挙にどう影響を及ぼすか不安定要因は高まる一途である。
一方、米国はじめ世界の金融マーケットは、トランプ氏が株高政策を進めてくれるだろうという期待感で走ってきた。
その金融マーケットだが、新年からは債券市場も株式市場も金利上昇の懸念で揺れ出している。
トランプ政権による米国第一政策は、インフレを招きかねず、それを警戒した金利上昇である。
この先どんな展開となっていくのかは、それこそ神のみぞ知るところ。 ずっと見守るしかない。
ひとつだけ、あまり認識されてはいないが要注意なのは、カネ膨れ張りぼて経済の脆弱性だろう。
金融マーケットもそうだが、「価値の裏付けは、あるはずだ」で、実体から大きくかけ離れて膨らんできている。
そういった膨れ上がりは、ひとつ歯車が狂うと中身がないだけに、あっという間に大崩れとなる。
張りぼての経済は、ひとたび空気が抜けると、一気に縮小し信用不安がパッと広がる。
カネ余りで膨れ上がってきた世界経済が、一転してカネ不足の状態に叩き落されるのだ。 そうなると、金利は跳ね上がる。
そういった展開は、さほど警戒されていない。 それもこれも、いまだ世界的なカネ余りのなせる業なんだろう。
おそらく今年は世界的にみて経済や社会の混乱が高まるだろうし、そうなると想定外のことも起こり得る。
われわれ本格派の長期投資家は、いつも実体経済から離れないようにしている。 それでも、身構えてはおこう。