米国の中央銀行にあたる FRB のイエレン議長は、折にふれてかつなんとも慎重に年内の金利引き上げを示唆している。
なんとも慎重にというのは、性急に金利引き上げを実施すると、せっかく盛り上がってきた経済活動に冷や水を浴びせかねないからだ。 そうなっては、元も子もない。
その辺りは、株式市場が景気判断のバロメーターの役割を果たしている。 すなわち、景気回復基調を歓迎して米国の株価はじりじりと上値を切り上げてきているものの、金利上昇の話が流れるたびに警戒売りが出る。
そういった警戒売りで株価を冷やす度合が薄れていくにしたがって、出口戦略にもゴーサインが灯るのだろう。 それが、年後半か年内遅くではなかろうかというのが、一般観測である。
なぜ、景気回復の芽をつぶさないよう慎重ながらも、出口戦略つまり金利引き上げを実行しようとしているのか? 危険だからだ。
サブプライム問題やリーマンショックを経て、米国やヨーロッパの金融界は大混乱に陥った。 放置していれば、大銀行といえどもバタバタと潰れ、信用不安から金融恐慌に至りかねない。
それは避けなければならないといことで、先進各国は未曽有の資金供給と政策金利ゼロ誘導を断行した。 その結果として、各国中央銀行の財務は平時の4倍から5倍にまで膨れ上がった。
これは、あくまでも緊急措置であって、いつまでも続けられるものではない。 だらだらと続けていれば、どこかでインフレの火が燃え上がってくる。
インフレともなれば、年金生活者はもちろんのこと一般生活者の家計を直撃する。 そうなっては絶対にまずいから、異常なまでに引き下げた金利を徐々にながら、正常なレベルにまで引き上げようというのが、米国の出口戦略である。
きわめて健全な金融政策の方向である。 ひるがえって日本では、まだまだ日銀中心に資金を大量にばら撒き続けようとしている。 危険な道を突っ走っているわけだ。
われわれは、政府日銀の政策がすべてとはせず、自分の頭でしっかり考えて行動しておこう。