米国も日本も戦後最長という景気拡大を続けている。 といっても、あまり実感はないが。
それはそうだろう、統計上は景気拡大しているとはいうものの、低インフレのままなんだから。
そう、物価上昇を伴った景気拡大なら、まわりまわって企業の売り上げや給与収入の増加を実感できる。
ところが、低インフレだと企業の売上げも労働者の給与も、そうそう増えてくれない。 つまり、景気回復をあまり実感できない。
そこで、米欧日は最優先の政策課題として、2%インフレの達成に躍起となっているわけだ。
2%インフレの達成にはと、政策金利をゼロ同然にしたり大量の資金供給に走っている。
問題は、ここからである。 超のつく金融緩和で、辛うじて統計上の景気拡大を維持している。
いってみれば、カンフル注射を打ちまくって、なんとかリング上に立っているボクサーのようなもの。
どうみても試合続行は無理。 一刻も早くリングを降りて、休養を取り体力の回復を図るべきである。
景気も同様で、無理して拡大を続けるよりも、しばらく休養を取って元気を取り戻した方がいい。
つまり、ゼロ金利やマイナス金利なんてカンフル注射は止めて、健全なる経済活動の促進に舵を切るのだ。
ゼロ金利や大量の資金供給に甘えることができなくなれば、多くのゾンビ企業が淘汰されていく。
それに伴って、大量の失業が発生する。 しかし、すこし時間をおくと、みな新しい職場に収まっていく。 つまり、労働力の再分配だ。
労働力不足がいわれている現在、社会にさして富を生み出さないゾンビ企業から、健全経営の企業へ人材が移動するのは貴重である。
多くのゾンビ企業が振るい落とされ(資本の再分配)、労働力が再分配されることで、経済活動全般の贅肉は削ぎ落とされより筋肉質になる。
これを不況の効用という。 資本主義経済の良いところは、景気の循環で企業の適者生存と経済活動の自浄作用が進むことだ。
この自浄作用を押しつぶしてはいけない。 無理を重ねていると、いつかは経済合理性の鉄槌が下る。
これを、市場のしっぺ返しというが、マーケットだけの問題ではなく経済全般に、津波が押し寄せることになる。
われわれ長期投資家は、経済活動の自浄作用でも、大津波でもドンと来いだ。 ごく自然体で乗り切っていける。