官製相場というと、その時の政権が株価を高値に持っていこうと画策するのが一般的である。
80年代には、NTTが新規に株式を公開するにあたって、できるだけ高値で政府持ち株を売却しようと株高政策に力を入れた。
当時は日銀が昨今のように株式を購入するなんてあり得なかったから、証券会社などに全面的な協力をかなり強引に要請した。
NTT株が高値で上場すれば、それだけ国庫に入る資金も大きくなる。 それはそのまま、NTT株の購入者に高値つかみをさせることにつながっていった。
最近では日銀が株式ETFを買いまくっている。 これまでに28兆円も買ったが、このままいくと来年には公的年金を抜いて日本最大の株主になるとのこと。
これなどは、日銀がデフレ克服とアベノミクスへの協力姿勢を示すということで、完璧なる株高維持の官製相場である。
米国でも今年のはじめに、トランプ政権は中央銀行にあたるFRBに圧力をかけて、出口戦略にブレーキをかけさせた。
このままFRBが金利引き上げを続けると、それを警戒して株価は下がる。 それは、中間選挙にマイナスという判断なのだろう。
実は、もっと強烈な官製相場が世界中で横行しているのだ。 それは、先進国や中国で史上空前の資金供給して株高を維持していることだ。
2008年9月のリーマンショックで、世界各国は景気の落ち込みを防ぐべく、かつてないほどお金をばら撒いた。
米国、EU、日本の中央銀行は資産規模を4倍に膨らませたように、途方もない資金供給量である。
それが、もう10年にわたって、世界中の不動産や株式市場で金あまり相場を演出してきたわけだ。
さて、ここからが本番である。 いつの官製相場も永久には続かない。 いつか、大きな反動をもたらす。
マーケットでは、その時々の経済活動での需給を反映させて価格形成がなされていく。
そこへ、国とか中央銀行のような絶大なる資金力を持った市場参加者が登場すると、価格形成が恣意的に歪められていく。
歪められた価格形成が続いているうちに、経済活動そのものが歪みだし、経済全般が蝕まれていく。
最終的には、国民経済的に大きな悪影響をもたらす。 ツケを支払うのは、いつも国民である。
たとえば日銀のETF購入で、ゾンビ企業の多くが株高に救われて延命できてしまう。
税金もまともに払えないような企業を、数多く延命させるコストは国民の負担となる。
あるいは、このまま大量の資金供給を続けると、バブル現象からインフレへの道を加速することになる。
結局のところ、苦しむのは国民である。 われわれは本格的な長期投資で荒波を乗り切れるが、多くの人は大変だろう。