昨晩の直販投信社長会で真剣な話し合いとなったのが、ネットからの売却注文。
われわれ直販の投信でネットサービスを導入しているところは、このままでいいのかなという疑問をずっと抱いている。
ネットでの売却注文は、ポンと押すだけ。 だから、投資家顧客はなにかあると、ふと注文ボタンを押してしまう。
もちろん、投信は買うも売るも投資家顧客の自由。 その点を考えると、ネットサービスは利便性が高い。
現に、さわかみ投信でも巨額の投資をしてきた。 独自のネットシステムの構築に5年強の年月をかけ、常時30~40数名のSEやアプリケーションの専門家を投入し続けた。
それでも、次から次へと導入される新しい法律に開発がついていけず、システム事故を起こしたら信用問題に発展しかねないと判断し、独自のシステムは放棄した。
そして、野村総研のシステムを導入することになった。 断念した独自開発も、野村総研のシステムも、ものすごくお金がかかっている。
これも、ファンド仲間の利便性を考えると、ネットサービスあったほうがいいと判断してのもの。 高いコストも必要経費と腹を括っている。
ところが、昨日の会議で驚くべき報告があった。 直販投信だが、地銀にも販売ルートを広げている会社からの報告だ。
なんと、地銀に販売してもらっている分の解約は、自社の直販部門の解約と比べ、はるかに少ないとのこと。
最近は金融庁の強い指導もあって、投信の回転売買を専らとしてきた営業が影を潜めてきている。
代わって、良い投信を長く保有してもらおうとする窓口営業が増えつつあるようだ。 そういった地銀での解約売りが減っているのだ。
下落相場などを不安がって、どうしても保有している投信を売却しようとする顧客が増えたりする。
そういった顧客に対し、「ここで売るのはもったいない、むしろ買い増しを」といった一言が、窓口対応ではできる。
それが、ネットだと売却ボタンを押すだけ。 だから、誰も躊躇させてくれないままに売却注文を出してしまう。
この違いが、解約件数や額となって表面化して、直販部門は地銀に大きく水をあけられているとのこと。
このあたり、しっかり考えなければならない問題である。
運用成績で抜群な直販の投資ですら、口座開設もファンド購入も、これだけ躊躇する日本人だ。
ようやく長期投資をやってみようと決断してファンド購入したのに、ネットサービスがある故に、ふと売却ボタンを押す誘惑に引っ張られてしまう。
われわれは本当の意味での長期投資を根付かせ、多くの人々に長期の財産づくりで喜んでもらおうとしているのだ。
そういった長期保有型の投信ファンドでは、売買の利便性は案外とマイナスとなりかねない。
ここのところ、真剣に考えてみたい。