この30年ほど、世界は景気後退をやたらと嫌って、無理やりの成長路線をなんとか維持しようとしてきた。
それがゼロ金利政策に代表される金融緩和や、これでもかこれでもかの資金供給に表れている。
そういった人為による景気拡大路線の維持は、バブルという現象となっていって、いずれは破裂を迎える。
バブルが破裂すると、あっという間に経済活動は縮小し、景気は暴力的に後退させられる。
そもそも景気なんて、膨れ上がったり萎んだりするものである。 それを、景気循環という。
人々の利益追求は、欲望が膨れ上がるままに果てしなく拡大していくが、物事には限度というものがある。
どこかで供給力の限界や価格の高騰といった壁が立ちふさがって、さらなる欲望の膨れ上がりに水を差す。
ひとたび景気拡大に水が差されると、今度は損したくないという欲が前面に出てきて売り逃げが集中し、景気は一気に後退となる。
この一連の流れが、景気の立ち上がり→景気拡大→景気過熱→景気失速→景気後退→不況突入→景気立て直しといったサイクルとなっていく。
景気循環サイクルの景気後退から不況突入時には、経済活動における弱い部分がそぎ落とされ脱落していく。
中途半端な参加者がどんどん脱落していき、強いものが残ることで新しい上昇の芽生えとなっていく。
これを不況の効用という。 適者生存のスクリーニングがかけられて、好況時にはおんぶに抱っこだった部分が消え去る。
経済全体が身軽で軽やかになっていくわけだ。 つまり、より健全な景気拡大が期待できる。
もうそう遠くない将来に発生するだろう金融バブル崩壊では、すさまじいほどの脱落が発生しよう。
ゼロ金利や大量の資金供給に甘えてきた人達のみならず、ゾンビ企業のほとんどが削ぎ落されよう。
なんでも国頼みで自分では動こうとしない他力本願の人たちも、自分の力で生きて行けと放り出されよう。
しばらく経済全体に大混乱は免れないが、ずいぶんとすっきりとするはずである。
日本経済も、できるだけ早くこのスクリーニングを経ることで、力強い再生の途に就きたいものである。