しっかり長期投資を続けていくと、どのくらいとは約束できないが、それなりにお金は殖えていく。
さわかみファンドを例にとっても、設定来19年4カ月で年4.3%にまわり、当初の1万円が2万2717円に殖えている。
2008年9月のリーマンショックや昨年末のあの暴落などを経ても、お客様の資産は2倍以上に殖えているのだ。
ゼロ同然の利子しかつかない預貯金はもちろんのこと、他の多くの利殖商品よりずっと高い成績の財産づくりとなっている。
これが長期投資のリターンである。 といって、そこで思考停止してもらっては困る。
もっと大事なリターンが長期投資にはある。 第1は、お金に働いてもらうことだ。
日本のような成熟経済においては、お金を預貯金に寝かせておくのではなく、経済の現場で存分に働いてもらうことが重要になってくる。
一般的な投資ではマーケット内でお金の分捕り合いをするだけだが、長期投資はマーケットを通して経済の現場に資金を投入する。
不況時や暴落相場のような時には、人々はリスク回避で現金化を急ぐ。 経済の現場から資金が吸い上げられてしまい、経済活動はガクンと落ち込む。
そういった時に長期投資家が企業を応援しようと買いを入れることで、マーケットを通して経済の現場にマネーを供給することになる。
これをリスクマネーの供給というが、国の景気対策予算や日銀の資金供給と同じような効果がある。
景気の落ち込みを阻止したり、景気浮揚に貢献することは、国民全体の所得向上に寄与する。 これも、長期投資のリターンである。
第2に、長期投資家は応援企業を選別することで、景気回復や景気浮上の質を高めることになる。
国の景気対策予算だと、どうしても政治力が働きゾンビ企業などを救済したりしがちとなる。
ゾンビ企業がはびこる経済は非効率だし税金を食うだけで、社会的な富の創出にはむしろマイナスとなる。
そういったゾンビ企業を市場から退出させていくには、長期投資による企業選別が不可欠である。 社会的には大きなリターンとなる。
第3に、成熟経済では個人の消費と長期投資が車の両輪となって、成長を支える。
ところが、この28年間、生活防衛が先に立って個人消費は抑え気味となり、長期投資どころか預貯金マネーが著増していった。
それでは、日本経済は成長しようがない。 結果として、所得は伸びないからさらに消費を抑える悪循環となってきた。
もし国民が長期投資を積極化させていれば、その金銭的リターンが生活していく上での安心感を高め、消費拡大にもつながっていったはず。
不況時や景気停滞時に、長期投資のリターンが消費拡大にまわる効果は絶大である。
このように、長期投資からはいろいろなリターンがもたらされる。 それなのに、日本の個人マネー880兆円が預貯金に寝たままになっているのだ。
日本経済に対し、その1.6倍ものお金が働こうとせず惰眠をむさぼっているのだ。 何とも歯がゆい現実である。