さわかみグループの社史と、9月20日に出る新刊の原稿を書き終えた。 社史はずっと前に仕上がっていなければならなかったのに、意外と苦戦した。
苦戦の理由は、書き出したら面白くなってどんどんのめり込んでいったところにある。 当初は簡単に考え、1か月もあれば書き終えると気軽に引き受けた。
ところが、さわかみ投資顧問から始まったグループの歴史は、まだ18年なのに山あり谷ありで、これは一冊の本になるぞと勝手に盛り上がってしまった。 いずれ出版ということになるのだろうが、大まかなところは書き終えたから、ここで一服としよう。
9月20日に、サンケイ出版から出される新著は書名が ”2020年には大差がついている長期投資” で、いまいちビシッと来ない。 この10年ぐらいで、日本全体はユデガエル化が酷くなっていくが、長期投資をやっていた人は大きく浮上しているよ、といった内容をうまく表す書名が見つからなかった。
書名はちょっとつまらないものの、内容は濃いものになったと思う。 日本の財政はもういつパンクしてもおかしくないほどの綱渡り状態にある。 綱渡りのロープがぷつんと切れたら、日本経済や社会は大混乱に陥る。
たとえば、今年度96兆円の予算において、年金や医療費など社会保障関係費と国債費だけでも54兆円に上る。 それに対して、税収は50兆円ちょっとで46兆円の財政赤字となり、今年も40兆円を上回る国債という借金を重ねる。
このような、とんでもない赤字財政がずっと続いているのだ。 そして、毎年40兆円を超す国債を発行して、赤字の穴埋めをしている。 もう、すでに国は1039兆円の借金を抱えていて、このような綱渡りはそういつまでも続かない。
昨年の4月からは黒田日銀総裁が国債大量購入政策に踏み切った。 2%のインフレ目標をなにがなんでも達成するということだが、財政ファイナンスに加担しているといえなくもない。
いよいよ国の借金財政は日銀を駆り出してまで国債を発行する段階に入ったとなると、その先には財政破たんという言葉がちらついてくる。
もっとも、日銀には通貨発行という武器があるから、国債を際限なく買うことも可能。 しかし、紙幣をじゃんじゃん刷ることになるから、とんでもないインフレが待ち構えているのは覚悟しておこう。
財政が破たんすれば、行政サービスは止まり、年金や医療費など社会保障にも支障をきたす。 とはいえ、国の財政は無理に無理を重ねているのも事実。 そして、インフレ懸念どころかデフレ脱却にしゃかりきとなっている。
不思議なことに、それでも何とかなっているし、政治も国民も財政に対する危機意識はそれほど高くない。 どうみても、ユデガエル状態にしか思えない。
そういった不気味な安泰に浸ってのんびりすることなく、われわれは長期投資を進めていこう。 いざグラッとなった時に、一番頼りになるのは人々の生活をベースとした企業活動であり、長期の株式投資である。
そのあたりを、しっかり書き込んでおいた。