公的年金の運用

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 5年に一度、公的年金の運用が見直される。 まさにいま、その見直しが進んでいるようだ。 報道によれば、カナダの公的年金と共同歩調でインフラ投資案件に、最大で2800億円の投資に踏み切るとのこと。

 どんどん見直しを進めるべきである。 これまでが慎重に過ぎた。 国債投資で安全確実にを金科玉条にして、投資運用とはとても言えないような運用もどきに安穏としてきたきらいがある。

 運用もどきとは? そもそも1980年代までは、債券の満期まで持ちきり運用で年6%以上にまわった。 そして、年金の運用目標は年5.5%だったから、何もしなくても運用になった。 だから、債券中心の運用姿勢が定着したわけだ。

 欧米の年金のように、中長期的な運用蓄積の最大化を狙って、株式投資に挑戦する必要性を誰も感じなかった。 ある程度はリスクを取ってでも株式投資の経験を積んでいくというプロセスを決定的に欠いたまま、日本の公的年金は世界最大の年金資金になっていったのだ。

 その上、まだ日本の人口構成が若かったから、年金資産はどんどん積み上がってくる一方で、高齢者への年金給付は限定的だった。 年5.5%の運用目標は軽くクリアできたこともあって、毎年の運用余剰でグリーンピアなど保養施設をどんどん建設していった。

 運用余剰は再投資にまわして複利増殖していくのが運用の常識である。 ところが、日本ではせっせとハコ物を建設し、役人の天下り先をつくっていったわけだ。 運用もどきしか知らない人たちならではの、なんとも愚かな行動である。

 ほんの1%強といえども再投資にまわしておけば、長年月の複利効果でとんでもない資産額となっていく。 公的年金の資産残高は大きく膨れ上がり、いまでも左団扇だっただろう。 ところが、グリーンピアなどの売却処理で巨額の損失を出し、その分だけ年金資産は相当に目減りした。 その責任は誰もとっていない。

 いま公的年金の運用見直しが進んでいるとはいえ、どこまで抜本的なものになるかは疑問である。 なにしろ、厚生労働省の役人を筆頭に業界の専門家や学識経験者を含め、運用もどきかせいぜい債券投資しか知らない人たちばかりなんだから。

 それが故に、10年物で年0.6%にしかまわらない国債投資に、公的年金資産の50%以上を振り向けて平気でいられるわけだ。 のんびりと運用の見直しとかをいっている前に、このいびつな運用状況を一刻も早く解消しないと恐ろしいことになる。

 いかに国債が安全といえど、こんな低利回りではまともな運用リターンなど望めない。 国民の皆が望む景気回復が本格化するにつれ、公的年金はとんでもない値下がり損を抱え込むことになる。 グリーンピアとは比較にならないほど巨額の損失リスクが待ち構えているわけだ。

 勇気を出して、株式投資の比率を大幅に上昇させることだ。 たとえば、現10数%の株式組み入れ比率をここ数年で30%ぐらいにまで高めてしまおう。 それが中長期的には一番安全だし、将来の国債損失リスクを補って余りある資産蓄積となろう。

 20兆円強の公的資金が株式市場に流れ込むとなると、株式市場は大いに沸き上がる。 その心理効果と資産効果で、景気はどんどん右肩上がりで急回復していく。 それが国の大幅な税収増につながり、国債発行額を減らせる。 将来の国債下落リスクをも引き下げることができるのだ。

 でも、20兆円強の公的年金を株式に振り向けると、その分だけ保有国債を売却することになる? なに、毎年の積立流入額を株式投資にまわすだけのことで、わざわざ保有国債を売る必要はない。

 抜本的な見直しって、このぐらいやらないとね。 でも、いっておくが世界の年金運用からいったら、30%ぐらいの株式投資比率はまだまだ低い方なんだよ。