そろそろ4週間になろうとしている日本株市場の調整局面をみるに、投資家心理というやつはいつになっても変わらないものだと、妙に感心してしまう。
平均株価で1100円を超す棒下げに始まって、急反発とさらに売られを繰り返しつつも、株価全般は22%ほど下げた。 その前の半年間で日本株市場は70%ちょっと上昇していたので、そのスピード調整としては別に驚くにあたらない。
笑えてくるのは、事の発端となった米国株市場は大きく売られたり戻したりしながらも、株価全般はほとんど下げていないことだ。 バーナンキ議長による超金融緩和政策の出口戦略をほのめかす発言に対し、マーケットはそれなりの下げで敬意を表したものの、実体経済の堅調な回復ぶりを買う投資家も存在しているのだ。
一方、日本では米国が金融引き締めに踏み切ると拡大解釈して、株は売りだと大慌てとなった。 というか、これで株価は下がるのではないか、だったらいち早く売ろうという投資家心理をさらけ出した。 損したくないという投資家心理だ。
相場を追いかけることが株式投資だとする投資家がほとんどの日本株市場では、儲かりそうだで皆がドドッと買ってくる。 損しそうだで、泡食って売り逃げに走る。 価値判断に基づく落ち着いた投資というものが、まったく出てこない。
先物を使って相場を仕掛ける連中からすれば、日本株市場のような巨大なマーケットで、これほどの単純かつ一方向に偏る株価形成など信じられないこと。 いくらでもぼろ儲けできる。
先週も書いたように、バーナンキ議長は株価や住宅価格の上昇がもたらす資産効果を、米国景気の浮上にフル活用しようとしている。 いくら出口戦略を検討するといっても、株価を叩き潰しては元も子もない。 微妙に調整しながら将来インフレの芽を削いでいきたいといっているだけのこと。 むしろ、どこまでうまく手綱を制御できるかで、バーナンキ議長の腕が試されているのだ。
そんなこと、ちょっと冷静に考えれば誰でもわかること。 だから、米国株市場では目先張りの売りに走る投資家いれば、安値を待ってましたと買い向かう投資家もいる。
ところが、日本株市場では投資家も市場関係者もマスコミと一緒になって、バーナンキ議長は金融引き締めに踏み切るとかの憶測におどおどするばかり。 いい加減に、自分の判断でマイペースの投資を進められるマーケットにしたいものだ。
その先鋒が、われわれ長期投資家である。