日銀の役割

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 日本経済がこれほどまでに長期低迷し、ずっとジリ貧を辿っているのは、日銀の金融緩和姿勢が生温いからだといった批判が、ずいぶん前から続いている。 たしかに日銀の政策はいつも後手後手の小出しで、マーケットに驚きを与えつつも、経済の現場を前向きの行動に移らす効果は薄い。

 それに比べると、米国の中央銀行にあたる FRB (連邦準備理事会) のバーナンキ議長は思い切った政策を歯切れよく打ってくる。 金融の量的緩和も第1弾、第2弾、第3弾と絶妙なタイミングで打ち出した。 それをみるに、日銀の優柔不断さが余計と目立ってしまう。

 ただ、ここで思考停止してはなるまい。 そもそも景気を浮上させたり経済を活性化させるのは、政治とりわけ政府の役割である。 それを日銀に押し付けるのは本末転倒もいいところ。 日銀の役割は通貨の番人として、国内の資金量を過不足ないよう調整することだ。 デフレであれば資金供給を増やし、物価上昇が激しくなればインフレを警戒して金利を引き上げたりするのが日銀の仕事。

 では、バブル崩壊後ずっと日本経済の足を引っ張り続けているデフレ現象は、やはり日銀の怠慢? それは日銀の資金供給が不足しているからではないだろう。

 日本は1993年の9月から超低金利政策に入っており、もう19年もジャブジャブの資金供給を続けているのだ。 長期金利も10年物で、2003年から04年にかけて年0.4%と世界史上最低金利を大幅に塗り替え、現時点でも年0.7%台である。 ちなみに、切れ味のよい金融緩和政策を次々と打ち出している米国だが、長期金利は年1.6%台の水準にある。

 いけないのは、ジャブジャブに供給されている資金が経済の現場に流れないことだ。 銀行は中小企業などへの融資でリスクを取るよりも、日銀への当座預金で年0.1%の利子を稼ごうとする。 いっておくけど、年0.02%で集めた預金で年0.1%の収入なら、ノーリスクで年0.08%の利ざやを稼げるのだ。 こんなチミチミしたことやっていては、経済活動が活発化するわけないだろう。

 銀行だけが問題ではない。 資金をたっぷり抱えている個人や企業が前向きの行動に移りたくなるような政策がさっぱり出てこない。 いつも書いている大幅な規制緩和と所得減税、あるいは長期投資減税など、民間の活力と資金を経済の現場に誘導する政策を次から次へと打ち出せばよいのに、そういった経済センスが政治家には欠けらもない。

 他にも、成熟経済の日本で一刻も早く断行しなければならない経済政策はいくらでもある。 それは、新著 ”お金をまわすだけでいい”  KK ベストセラーズ出版に書いておいた。 参考になると思う。

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