漠たる不安

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 いまの日本には、漠たる不安といったものが充満している。 少なくとも、そんな感じではなかろうか。 その証明として、読者の皆さんも含め、一体どれだけの人が将来に一点の曇りもなく青天井に広がっているとルンルンに生活しているだろうか。

 景気の先行きやら、国の借金の問題やら、年金の将来やら、なんだか不透明なことがやたらある。 その中には、まだ現実になっていないだけだが、そのうちどこかでとんでもないことになるだろうなといった確信的な不安も多い。

 そのひとつが、国債の値崩れというか暴落懸念だろう。 これだけ大量に発行してきて、まだ増発する方向にある国債は完全に供給過剰の状態にある。 どこかで値崩れが始まったら、経済のみならず社会にも相当な混乱が押し寄せるだろうな。 そうなったら、自分の生活どうなるのだろう、どう乗り切ったら良いのだろうかと、いろいろ悩ましい。

 庶民感覚的には、ちょっと拙いことになるだろうなと思う。 ところが、専門家に言わすと、日本の場合は国債発行の大半が国内保有されているから、ギリシヤやスペインのように海外からの売りで崩されることはないとのこと。

 たしかにそうかもしれないが、彼らの自信を裏づけているのは ”日本の金融機関が揮発国債の大半を保有しており、自分達が売らなければ、国債の値崩れなんてあり得ない” という論理である。 国の超低金利政策が続いており、デフレ現象は解消の気配もないから、彼らは国債保有が一番有利な投資だと信じて疑わない。

 世の中で、これほど当てにならないこともない。 ”自分達が売らなければ” という暗黙の合意には、日本の金融界特有の ”国が先導する大きな流れに乗っていれば大丈夫” という、政策盲従の生き方が染み込んでいる現状がある。 ただただ国の政策に従いますと、はじめから思考停止状態にあるのだ。

 悪いけど、マーケットは国の政策盲従とかで現状にずっと甘んじているなんてことはない。 どこかで合理的な価格水準への回帰エネルギーが爆発する。 供給過剰の国債がそのうち自然発生的に値崩れを始めよう。 その時は、金融マン達の思考停止など問答無用で踏みにじってしまう。

 いざそうなると、思考停止の人達ほど怖いものはない。 保有している国債が値崩れを始めた、これはまずいと我先の売り逃げに一転するのは眼に見えている。 大量発行された国債の大半を保有している人達が、とにかく売ろうともうそれしか頭にない。 下手に売り急げば、自分の首を絞めるだけといった考え方は出来ない。 かくして、売りが売りを呼ぶ展開で国債は大暴落となる。

 1990年代に入ってからの株価大暴落がまったく同じである。 80年代後半のバブル相場で、企業や銀行は、”われわれが売らなければ、株価は下がりようがない” と豪語していた。 その彼らが、眼の色を変えた売りを出してきたのだ。 市場の大半を抑えていた彼らの売りに対応する買いなんて、この世に存在しない。 株価はあっという間に60%も下がってしまった。

 さて、日本の国債どうなるか? ”金融機関が売らなければ” という言葉だけは信じないでおこう。

 

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