われわれが売らなければ

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 こんな書き出しで、何のことかピンと来る人は、まずいないでしょう。 それはそうで、もう20年以上も前のバブル華やかりし頃のことだし、大企業や金融界の一部の人達が豪語していただけの表現なのだから。

 当時は、東京証券取引所の第一部上場企業の総発行株数の55%が、企業や銀行の株式相互持ち合いと生保による政策保有だった。 それにプラスして、18%強が年金など機関投資家の保有だった。 実に、日本株市場の74%近くを ”日本企業村の論理” が支配していたわけだ。

 そんな彼らが、とりわけ企業や金融機関の幹部が、常に豪語していたのが ”われわれが売らなければ、日本株はなにがあっても磐石だ” という言葉だった。 たしかに、日本の株価は1989年末まで一直線の右肩上がり上昇を続けた。 その最大の功労者は企業や金融機関による恒常的な株買いであったのは、誰も否定できない。

 そう豪語していた彼らが、1990年に入ってからというもの、われ先の売りに一転した。 売りが売りを呼ぶ展開で、日本株は下落に次ぐ下落で、60%強も下がってしまった。 それが、あのバブル崩壊である。 めちゃくちゃな売り逃げで、彼らは自分で自分の首を締めたわけだ。 結果として、株式市場の時価総額は606兆円から230兆円へと激減し、日本全体としても巨額の富みを失ってしまった。

 彼らにしてみれば、保有していた株を売っただけのこと。 株価の値下がりで大きな損を蒙ったけれど、他の利益と相殺すれば決算はなんとでもなる。 われわれ個人投資家にとっては冗談ではないよだが、彼らは投資家意識など欠けらもなく、ただただ事業戦略の一環で株を買っていただけのこと。 ”自分の保有株を売るのに、なにが問題なの” という論理を貫いて、日本株市場をここまで潰してきたわけだ。

 その持ち合いも、いまや8%にまで下がってしまったから、もうここから先の売りは知れている。投資家の論理などそっちのけの法人売りは、そろそろ出尽くし状態になってきた。 ここからは、まともな株式投資を思い切って展開できる。

 ここまで書いてきて、そろそろピンと来るでしょう。 銀行はじめ郵貯や生保それに年金が国債を山ほど抱えているが、彼らの言い分がまさに、”われわれが売らなければ、国債は値下がりしない” じゃない。 この言葉、どこまで当てにできるのかな。

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