お金の流れを広げよう

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 これは何度でも繰り返さなければいけないことだが、経済活動なんてものは、お金の流れを太くしてやれば、いくらでも活発化する。 これまでの日本であれば、銀行や生保そして郵便局に預けられた資金は、企業融資や財政投融資で経済の現場に1銭の無駄もなく流れ込んでいった。 それが、日本経済の高度成長をしっかりと支えた。

 ところが、バブルがはじけてからの21年間というもの、産業界の資金需要が減ったのと、金融機関の方が貸し出しリスクを恐れるあまり、経済の現場に流れ込むお金の量がやたら細くなってしまった。 たとえば、全銀行ベースで預貸率は74%にまで下がってしまっている。 かつては常時100%前後だったのと比べるに、ずいぶんとお金の流れが弱まっている。

 中小企業に対する預貸率に至っては、67%にまで下がっている。 日本経済の総生産額の大半と雇用のほとんどを中小企業が担っていることからも、中小企業への資金の流れが細くなっているのは絶対に拙い。 それでも、貸し倒れリスクを嫌った金融機関の融資姿勢が緩むことはない。 結果として、中小企業の倒産が高水準となっているわけで、日本経済にとっては大きな損失である。

 一方で、個人の預貯金マネーは771兆円にも積み上がり、日本経済の1.6倍を越す。 そのうち、銀行は26%、農林系金融機関は74%を、そして郵貯はほとんどを国債購入などに向けている。 これでは、経済活動はしぼむばかりとなっても仕方ない。

 どうすればよいかは簡単で、個人個人が自分の預貯金の一部を引き出して、自分の意思で経済の現場へ放り込んでやることだ。 消費にまわしてもいいし、長期投資しても良い。 あるいは、NPO やボランティアなどに回してもいいから、とにかくお金をつかうことだ。

 経済はお金をつかえばつかうほど拡大成長し、結局は給与など所得増加となって戻ってくる。 目をつむってでも、お金をつかってやることで、まわりまわって自分の所得を増やせるのだ。 間違えても、お金を後生大事に抱え込んではいけない。

 ただ、消費や長期投資なら自分の利益に直結するから、お金もつかいやすい。 しかし、その他となるとちょっとひるんでしまう。 昨年の大地震では、それこそ心の底から寄付や義捐金を届けたいということで、多くの方々が大きなお金を出してくれた。 あれと同じ感覚で、もっともっと多くのお金をつかうのだ。 そして、日本経済を元気にさせるのだ。

 といっても、どこへどうお金をつかおうかとなると、寄付やボランティア以外では、これといってアイデアが思い浮かばない。 そこにこそ、さわかみグループの社会的使命がある。

 一般生活者に本格的な長期保有型の投信をお届けしようから始まったさわかみグループはもともと直接金融の本格普及、つまり日本のお金の流れを広く太くすることに貢献しようと立ち上がった。 個人の財産づくりのお手伝いをすることで、個人マネーを預貯金ツンドラから溶け出させるきっかけをつくる。 先ずは、預貯金からお金の出し癖をつけさせるわけだ。 

 預貯金に寝かせておくよりも、ずっとおもしろいし意義のあるお金のつかい方を、できるだけ多くの人々に実感してもらう。 スタートは、本格的な長期投資からはじまるとしても、そこから先のさらにおもしろいお金のつかい方を、グループとして次から次へと社会に提案していていっている。 投資とか出資では、なんらかのリターンを意識するが、それ以外のお金の流れがあってもいい。

 出したお金がいくらになって戻ってくるかといった投資や出資の観点から離れて、ノーリターンあるいはソフトリターンでも構わないが、お金を出した本人が好きで楽しめればいいだろうという考えを広めたいのだ。 日本のように個人マネーの蓄積が進んだ成熟経済では、楽しんでお金を社会にまわすという考え方が一般的となればなるほど、社会に活力と潤いが出てくる。

 そういった社会や経済をつくっていくことは、まさに大人の責任である。 個人個人は預貯金という強力な武器を持っているのだから、あとは意識と意欲そしておもしろがり次第である。