投信の販売現場では、信託報酬率の引き下げ競争が激化している。
信託報酬率が低ければ低いほど、投資家顧客の手取り分が多くなる。
販売サイドでは、いかに多くの資金を集めるかの競争で、すこしでも顧客アピールできる材料が欲しい。
その点、高い運用成績を保証することはできない。 かといって、他に差別化する材料がない。
となると、どうしても信託報酬の引き下げ競争にのめり込んでいくしかなくなる。
幸か不幸か、投信会社における運用実務のほとんどはコンピュータにやらせている。
アナリストやファンドマネジャーへの支払いコストは、ほとんどゼロである。
したがって、投信各社は信託報酬の引き下げ競争にいくらでものめり込んでいける。
ということだが、果たしてこのままでいいのかだ。 いまや、信託報酬率が0.1%を切る投信ファンドが続出している。
たしかに世界のマーケットは40年越しの上昇相場に乗って、株式や債券などがずっと天井追いの展開を続けてきた。
資金もどんどん流入してくる。 したがって、信託報酬率をこれでもかこれでもかと引き下げることができた。
しかしだ、歴史に例のない40年に及んだ上昇相場も永久に続くことはない。
もう既に、大崩れの徴候が散発しだしている。 その先では、投信各社はダブルパンチを食らう懸念が高まってくる。
投信ファンド購入で流入してくる資金が先細りとなり、いずれは資金流出も覚悟しておく必要がある。
もうひとつは、マーケット下落に伴って各投信ファンドの間では、純資産額の減少が顕著となってくる。
どちらも、投信会社にとっては信託報酬額の縮小という現実問題に直結する。
そこであらためて、各社は信託報酬率を極限にまで引き下げてきた咎めを食らう。
あまりに低い信託報酬率を売り物にしてきたが、その反動で信託報酬額が激減し、経営を揺さぶることになりかねない。
投信各社の経営が揺れてくるや、投資家顧客の間で動揺が走る。 それが、ファンド解約につながるのは必定。
その先では、ファンド解約の増加が投信会社の経営悪化を誘い、それが解約を煽る悪循環に陥っていく。
もうひとつ、毎月の積み立て投資を続けてきた投資家顧客を、大いなる不安に陥れることにも。
マーケットが値下がりしても積み立て投資を続けていけば、将来の大きな投資収益につながると教わってきた。
ところが、積み立て投資をしている先の投信会社の経営が不安となってきたら、自分の積み立て投資はどうなるのか。
どれもこれも、ここまでの超カネ余りによるバブル高の果てに到来するであろう大混乱である。
その大混乱を平然と乗り越えていく投信会社は、一体いくつあるのだろうか。