昔から、売りたい強気とか、買いたい弱気とかいわれる。 投資家心理を実に上手いこと表現している。
相場はまだまだ強いぞ、こんなにも買い材料があるぞ、などと強気を張っている人たちがいる。
彼らの本音は、どんどん強気を煽って、買い人気を高める。 株価などが大きく噴き上がってきたところで、自分は売り逃げしようという算段だ。
逆に、買いたい弱気は、さんざんに弱気の観測をバラ撒く。 皆が売ってきたところを、こっそりと買い仕込んでいくわけだ。
相場なんて、投資家の心理でどうにでも動く。 とりわけ、上でも下でも、どっちつかずの膠着相場では、心理作戦が効く。
こう書いてくると、個人投資家が跋扈していた時代は、そういった悠長な心理作戦があったかもしれない。
いまや機関投資家が株式市場の大半を抑えていて、投資家心理などの出番はない?
まして、機関投資家の株式運用の70~80%がインデックス先物の売買となっている。
売買のタイミング判断などは、すべてコンピュータがやってくれるので、投資家心理など無視もいいところだ?
そういいたくなるところだろう。 実は、そうでもないのだ。
機関投資家によるディーリング運用やインデックス先物の売買にも、投資家心理はしっかりと忍び込んでくる。
たとえば、最近の機関投資家や市場関係者の論調には、インフレや金利上昇トレンドの頭打ちを語る向きが多くなっている。
その裏には、債券も株式もまだまだ買える。 大きく下がったところは買いだ、そう信じ込もうとしている心理が見え見えである。
そう、これまでのカネ余り高値追い相場が終わってほしくないとする願望だ。 それが機関投資家の間でも充満しているのだ。
これまでの相場展開にしがみついて離れたくはない。 これまた、投資家心理の然らしめるところである。
それに輪をかけて、音楽が鳴っている間はダンスを踊り続けなければならない、機関投資家特有の職業病もある。
機関投資家は運用成績をしゃにむに追いかけなければならず、自分の判断で相場から離脱できないのだ。
そんな彼らからすると、どうしても下げ相場など見たくはないと願望を張りたくなる。
ところがだ、世界的なインフレ圧力は続いているし、米欧の政策金利は引き上げられている。
その現実が、じわじわと投資環境を悪化させている。 先週も仮想通貨の大手FTXが吹っ飛んだ。
投資には冷静かつ客観的な眼をもてと、よく言われる。 それを、機関投資家たちの「投資家心理」が曇らせているわけだ。
われわれ本格派の長期投資家からすると、彼らは後で大混乱に喘ぐのだろうと、高みの見物である。