市場には、いくつかの重要な機能がある。 それがあるが故に、昔から経済活動の要として重要視されてきたわけだ。
いってみれば、全身に血液を循環させる心臓や、毒素などを取り除く肝臓のような役割を併せ持った働きをしているのだ。
具体的には、経済活動における需要と供給の調整作用、需給の調整から生まれる価格決定機能、適者生存にかなわない企業を市場から退出させる機能などが、すぐ思い浮かぶ。
忘れてはならないのが、市場のウオーニング(警告)機能である。 これは極めて重要である。
どういうことかというと、市場のみならず経済活動の現場では、往々にして行き過ぎが発生する。
それに対して、経済合理性による修正作用、つまりカウンターバランスのエネルギーが、市場内で徐々に蓄積されていく。
そして、ある日突然に、蓄積されてきたエネルギーが爆発することになる。
買われすぎに対しては、総売りといったマーケット反応で、その寸前までの勢いを押しつぶしてしまう。
その圧力というか、総売りで押しつぶすマーケット反応は、もう否応なしである。
なにしろ、そこまで買って買いまくってきた投資家たちが、下げに直面して損失回避の売りに殺到するのだから。
これが、市場のウオーニング機能である。 なんのことはない、行き過ぎたものは反対方向へ振れる、それだけのことだ。
しかし、このカウンターバランスの機能は経済合理性への回帰を促すわけで、健全な経済活動には不可欠な働きをしてくれる。
通常であれば、カウンターバランスの圧力は自然と高まってくるもので、それが価格の上下変動を適度なものにしてくれているわけだ。
ところが最近は、市場のウオーニング機能を国や中央銀行が押しつぶしている。
金利をゼロ同然に押さえつけ、資金は無制限に供給することで、債券や株式の買い方に好き放題をやらせているわけだ。
カウンターバランスのエネルギー蓄積を、国や中央銀行が力でもって抑えつけているのだ。
それが、債券市場や株式市場でのバブル高を、これでもかこれでもかと促進させることになる。
昔から中央銀行とは喧嘩するなといわれているように、この流れには逆らいようがないと思いたくもなる。
しかしだ、いかに国や中央銀行が力でもって市場のウオーニング機能をないがしろにしようと、自然界の法則は無視できない。
高くなったものは必ず売られる。 一方向に片寄れば片寄るほど、その反動は大きくなる。
このすさまじい金あまりバブルは、そう遠くない将来に大きな崩れとなるのだろう。
今日の午後から来週の金曜日まで出張が続き、次回の長期投資家日記は11月2日となります。