昨年の10月頃から、しつこいほどひんぱんに、世界のマーケットは荒れるよといってきた。
実際、年末にかけて荒れ模様がどんどん酷くなっていった。 いまは小康状態にあるが、そのうちまた荒れ始めるだろう。
だからといって不安がることもない。 世界経済が正常化に向かうためには避けて通れない道と考えるといい。
正常化とは? 2000年に入ってから、世界経済は金融が引っ張る方向へと急傾斜していった。
いわゆる金融の時代ということで、お金が富を生んでいるかのような錯覚、つまり実感の薄い経済成長が続いた。
金融は経済活動の血液であり潤滑油にすぎないのに、いつのまにか経済活動の主役然としだしたのだ。
その背景には、世界的なマネーの大量供給と金融技術の高度な発展がある。
マネーの大量供給で、世界の金利がどんどん下がっていき、それだけ事業者にとっては資金調達が楽になり、コスト意識も薄れる。
そこへ、通信や金融技術の高度発展で、グローバルベースの信用創造やビジネス決済が瞬時にできるようになっていった。
もうそうなると、金融のサポートを抜きにしたビジネス拡大など考えられないということで、あたかも金融が経済活動の主役であるかのような捉え方が世界に定着していった。
プラスして、通信技術やコンピュータ活用の高度化で、金融取引は国境など全く無視して高速で飛び交うようになった。
瞬時に大量の資金が右から左へと動き、それが次の金融取引を誘発する拡大スパイラルで、金融取引全体は世界経済を5倍10倍の規模に膨れ上がっていった。
これが金融バブルであり、2008年9月のリーマンショックで一挙にはじけ飛んだ。
リーマンショックでもって金融の時代に終止符が打たれたと思いきや、世界は史上空前の資金供給でマーケットや経済の立て直しを図った。
またぞろというか、リーマンショック以前よりはるかに巨額の金あまり状況が世界経済を覆ったのだ。
実体経済を大きく上まわる金融活動が、世界の景気を支える図式はどう考えても無理がある。
お金の付け替えを高速でやっているだけで、一部のプレーヤーたちは高収入を得ても、世界の大多数の人々の所得増加にはつながらない。
そういった無理が綻びとなって表面化してきているのが、ずっと書いてきた「荒れるよ」である。
ここまで見てくると、もうお判りだろう。 われわれ長期投資家はいつでも実体経済をベースに行動するから、金あまりで浮ついた部分 などはじめから興味ない。
したがって、昨年末から始まった荒れ模様で、金あまりで浮ついてきた部分が剥げ落ちだしても、それでもって混乱に陥ることはない。
むしろ、実体経済にも影響が及んで大きく売られたら、長期投資家はしっかり買っておくだけだ。