円安もだが、安きに流れないことだ

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3年ほど前、日本の没落は米国などからの円高誘導圧力に起因するといった論調が強まった。

日本が無理やりの円高に追い込まれた結果として、経済は競争力を失い成長力を削がれたという論調だ。

したがって、円安の流れは日本経済復活に向けての狼煙(狼煙)となると歓迎された。

現実に、円安の流れが大手企業を中心に利益拡大と財務改善を促してきた。

また、株価も34年ぶりに史上最高値を更新するといった効果をもたらした。

ところで、ここからが今日の本論である。 本当に円高が諸悪の根源で、円安で万々歳なんだろうか?

思い起こすに、1990年代の半ばには1ドル75円まで円高が進んだ。 その後は、ズルズルと円安に陥っていった。

いまや、1ドル161円と、円の交換価値は半分以下にまで下がっている。

この間に、ゼロ金利で資金はいくらでも供給されるといった超のつくほど甘ったれた経営環境がずっと続いた。

もう半世紀にわたって日本企業への投資を続けてきた身からは、経営者がずいぶん柔になったなと思う。

たしかに、短期の利益を優先する財務戦略で、日本企業の表面的な見栄えはすごく良くなった。

また、大手企業中心に経営者の報酬はやたらと高くなってきている。

そんなところだけを欧米に見習って、果たして良いものだろうか?

一方、よく指摘されることだが、多くの企業で長期視野の研究開発や腹の据わった拡大投資は減ってきている。

それが、日本企業全般の世界における競争力やイノベーション力の低下につながっている。

国もまた、円安を売り物にして、海外からのインバウンド消費を煽り、いまや自動車産業に次ぐ収入源とか。

以前にも指摘したが、スイスは世界最強のスイスフラン高と観光立国とを両立させている。

日本のインバウンド戦略による安売りとは大違いで、スイス観光はやたら高くつく。

だが、通貨高やホテル高などを、はるかに上回る満足度でもって世界中の人々を惹きつけている。

もちろん、スイスフラン高でもって、スイス国民は世界最高の所得水準を謳歌している。

スイスに住んでいた経験からいうと、スイス国内でも頻繁にスイスフラン高を憂う議論を続けている。

それでも、スイスフラン高から逃げることなく、観光や時計はじめ化学産業などでは国際競争力を高める努力を怠らない。

その覚悟と強い意思が、スイス人をして世界最高の所得水準につなげていっているのだ。

日本も骨太とかの言葉遊びに終始せず、本気で強い日本を再構築していくべきである。