10年物の長期国債の利回りが、1%に乗せてきたことで、昨日のマーケットでは緊張感が走った。
もう今日は、それを忘れたかのように、半導体関連の投資にマーケットの関心が移っている。
とはいえ、日銀もマイナス金利を解除し、ゼロ金利政策ともお別れした。
ここから先、日本の金利もジリ高をたどるのかどうかは別としても、上がっていくことになろう。
それに対し、金利が上昇すれば、せっかく脱出しつあるデフレに舞い戻ってしまう。
景気の足を引っ張る。 そういった懸念の声が、あちこちから聞こえてくる。
しかし、もうそろそろ「金利を下げれば」の呪縛から、日本全体が意識開放すべきである。
この長期投資家日記でずっと主張してきたが、日本の超低金利やゼロ金利政策の功罪を検証すべきである。
功罪? そう、ゼロ金利政策のプラス面とマイナ面を洗い出すのだ。
日本は1995年から超低金利政策を導入し、99年からはゼロ金利に移行した。
その目的は、デフレ下に喘ぐ企業経営や日本経済を元気にさせるためということだった。
その反面、金利を下げて家計から利子収入を奪ってきたことのマイナス面は、一度たりとも語られていない。
1995年の段階で、家計の定期預金は526兆円ほどあった。 今は、1000兆円だ。
その平均の763兆円でみると、通常の3%利子なら22.8兆円。 4%なら30.5兆円の利子収入があった計算となる。
その70%が消費にまわったとすると、日本経済は3%から3.8%ぐらいの成長をしていた計算となる。
日本経済の60%近くが個人消費が占めていることを考えると、それだけの成長要因が削がれてきたことになる。
いくら企業倒産を防ぎ、デフレ経済を立て直すといっても、3%~3.8%もの成長要因を台無しにしてきたマイナス面は無視できない。
さすがに、世界的なインフレ圧力もあって、世界の金利は上昇してきている。
日本の金利も上がらざるを得ない状況になってきているが、マイナス面ばかりではない。
家計に利子収入が戻っていけば、それだけ個人消費の余力が生まれる。
一方で、日銀や政府は金利上昇で利子負担が増加し、新規の国債発行が難しくなるだろう。
これまでの国や日銀が力まかせで抑え込んできた政策が通用しなくなるのは避けられまい。
どちらも、経済合理性に沿った自然の流れであって、われわれ本格派の長期投資家からすると大歓迎である。