資産運用ビジネスと、マスコミ報道

Browse By

資産運用立国とか新NISAのスタートとか、資産運用関連の報道が多くなっている。

国民の間で、投資運用や資産形成の認識を高めてもらうためにも、結構なことである。

結構なことではあるが、大きな落とし穴が待っている。 それには、要注意である。

どういうことか? メディアの使命として、公正公平なる報道スタンスを守らなければならない。

それはいいとして、たとえば投信ファンドの成績評価でも、できるだけ多くのファンドを比較検討しようとする。

できるだけ多くのファンドを横に並べて比較しようとすると、どうなるか?

日本の投信ファンドで、成績評価するに足るファンドとなれば、ここ10年15年のものばかり。

それらはどれも、リーマンショック後の空前ともいわれるカネ余り上昇相場に乗ったファンドである。

そういったファンドの成績評価を参考にして、一般生活者が資産形成への道を踏み出すと、どうなるか?

もちろん、このまま金融緩和バブルが続いていってくれるならば、なんの問題もない。

ところが、世界的なインフレ圧力と金利上昇で、金融マーケット全般が揺れ始めている。

この長期投資家日記では、金融マーケットの大暴落を予想している。

この先どうなるかは神のみぞ知るのところだが、2年前までのゼロ金利の世界に戻ることはまずないだろう。

となると、この10年15年でみて良かったとされる投信ファンドの成績も、そのままで良いか見直したほうがいい。

すなわち、新聞などメディアによる投信ファンドの成績評価が役に立たないということだ。

そうなってくると、リーマンショックよりずっと前から成績を積み上げてきている投信ファンドを参考にしたい。

残念ながら、リーマンショック以前からまともに成績を積み上がているファンドは、2~3本あるかどうかだ。

となると、メディアとしては特定ファンドを応援していると批判されかねないので、報道はできない。

かといって、この10年15年の成績優秀ファンド(?)を、引き続き優秀であろうとは報道できまい。

メディアの担当記者からすると、なんとも歯がゆいジレンマだ。 さあ、どうするか?

ひとつの解は、成績数字比較などの定量評価から離れて、定性評価に報道の軸足を置くことだ。

すなわち、各投信会社が前面に出している投資哲学や、長期で顧客資産を殖やしていこうとしている姿勢を、きちんと評価して報道することだ。

それには、メディアの記者自身が「本物の長期投資とは、どんなものか」を学ぶことから始めてもらう必要がある。

その先で、本当に読者に有用な長期投資情報をメディがが発信できるようになるのだろう。