長期金利がちょっと上向きだした。 米国の10年物国債の利回りが1.9%台を固めてきた。
ドイツでは、2019年以来のマイナス金利国債が、先週はプラスに転じた。
ようやくだが、債券市場は世界的なインフレ懸念と、それに対する利上げを意識しだしたようだ。
といっても、まだ高を括っている債券運用者が大半で、みな一時的な現象とみている。
たしかに、世界の債券相場は1983年以降ずっと上昇トレンドにある。
つまり、39年間も上昇相場が続いているわけで、世界の債券運用者のほとんどが債券価格の下落を知らない。
それが彼らにとっては、債券は安全な投資対象であるとの神話につながっているわけだ。
だからこそ、マイナス金利国債に18兆ドル(2020年末)もの資金が買い向かうといった、信じられない現象にもなっている。
満期まで保有しても、絶対にプラスの収益とならない国債購入に、2000兆円も買いが集まっているのだ。
そんな債券買いでも、金利がマイナスの世界にあるから、十分に運用になると考えてのことなんだろう。
あるいは、世界的なカネ余りで運用マネーがどんどん流入してきており、マイナス金利国債でも後からの資金が買ってくれると読んでいるのだろう。
ともあれ、世界の債券運用者にとっては、債券相場の値崩れなど毛頭も考えていないと言えよう。
まあ、相場の先行きは神のみぞ知るところだから、横へ置いておこう。
ひとつはっきりしていることは、世界的なカネ余りとゼロ金利をいいことに、債券の新規発行が高水準で続いていることだ。
その中には、信用度の低い発行体による低格付け債、いわゆるジャンク債が大量に発行されている。
大きく積み上がっていっている債券発行残高の重みは、それこそ半端ではない。
なおかつ、発行体の信用度は低い。 そういったジャンク債などは、金利上昇にとても耐えられない。
いずれ時間の問題で、ジャンク債などの一角がデフォルト(債務不履行)陥る事態になっていこう。
そうなると、ジャンク債中心に債券売りが殺到し、それが債券市場の大崩れに直結していく。
長く債券市場の上昇相場が続いたこともあって、債券投資家の買いポジションは天文学的な数字となっている。
それらが売りに一転するわけだ。 凄まじい暴落相場となっていこう。 長期金利は吹っ飛ぶように上昇する。
そんな事態に陥ると、もはや米FRBなどが年内に3~5度の利上げをするどころの、悠長さはなくなる。
まあ、そういった展開の可能性も、ほんの少しでいいから頭に入れておこう。