1980年代後半の土地や株式投機バブルは、90年代に入って崩れ出した。
といっても、当初は前年までの強烈な買い上げにブレーキがかかった程度の下げだった。
実際に、年初からの崩れに対し、一時的な下げだとかの強気観測もまだ残っていた。
それが、4月2日に大手生保が株式を大量に売却する意向といった記事が一面に載って、株式市場は大崩れに入った。
それからというもの、売り逃げがあちこちから出てきて、株価全般はじりじりと下げ基調を続けた。
そして、92年の8月には底割れのような暴落に入っていった。 一番ひどかったのが、8月18日の下げだった。
18日の夕方に突然、TV東京の23時からのビジネスサテライトへの出演依頼が舞い込んできた。
株価暴落をどう止めようか、個人投資家に買ってもらうには、といったテーマで好きに語ってくれという。
生放送で、しかも好きに語ってくれていいというなら、こちらは大歓迎である。
日頃からの主張をテレビ視聴者に知ってもらうチャンスとばかり、思う存分に語った。
すなわち、日本株の暴落はバブルに踊った企業や金融機関そして機関投資家が、われ先に売りまくっているからである。
それに対して、個人投資家に買わせようというのは、あまりにムシが良すぎるし大した効果も期待できない。
ここは、先ず政治家や官僚はじめ日本の指導層が、自分のお金で株を買ってみることだ。
さすれば、どれだけ大量の売りが執拗に出ているかが実感できよう。 その実感をもって株価対策を講じるべきだ。
ちなみに、東証一部上場企業の発行株数の54%が企業や銀行による株式持ち合いとなっている。
そこへ、生保など機関投資家が政策保有を含め18%を所有している。 合計すると、日本株の72%の法人所有である。
その法人所有が、やみくもな売却に走っているのだ。 それに対し、個人投資家が買いに向かったところで焼け石に水である。
株価暴落を止めるには、企業や銀行そして機関投資家が株式売却を自粛するしかない。
彼らのやみくもかつ一方的な売りが静まれば、株価の底なし下落も収まってくる。
それからだ、保有株を丁寧に丁寧にほぐしていくのは。 それ以外に、72%を保有している彼らの逃げ道はない。
このまま売りを続ければ、法人株主たちは自分で自分の首を絞めるだけである。 そう語った。
結局のところ、日本株は60%以上の暴落となっていった。 株式保有者が売るのは勝手だが、その痛手は大きいものがある。
なぜ今こんなことを書いているかというと、今般の金融バブルが崩れると途方もない規模の売りが出てくる。
それで、収拾のつかない暴落相場となることをイメージしておいてもらいたいからだ。