米国の長期金利が1年ぶりに1.3%台に乗せてきた。 それでいいのだと、これは歓迎したい。
EUと日本はマイナス金利政策を導入しており、米国FRBも2023年までは長期金利を低利に据え置くと繰り返している。
そんな中、米国の長期金利はじわじわと上昇しだしてきた。 これは経済合理性が働き始めてきた、最初の徴候である。
どういうことか? コロナ禍にありながらも、巨額の財政出動で米国の景気が上向く期待からの長期金利上昇である。
景気が上向けば、資金需要も高まってくるので、市場での取り引き金利は自然と上昇し始める。
市場金利の上昇を察知して、債券投資家が少しずつ手持ちの債券を売りに出し始める。
それが、長期金利の上昇を招くことになる。 景気動向と資金需要を如実に反映する。 それが金利変動である。
いわば、経済活動のバロメーターでもある金利変動を、先進国政府や中央銀行は力ずくで抑え込んできた。
それに対し、米国ではマーケットメカニズムがまだ健全であることを示唆している。
だから、じわじわと米国の長期金利が1.3%台に乗せてきたのを、けっこうなことと歓迎しているわけだ。
歓迎? そうだ、国や中央銀行による力ずくの金利抑え込みに対し、経済合理性からの自然なる金利上昇圧力である。
この四つ相撲は、まだ始まったばかり。 というか、はじまったと喜ぶのは、まだ早すぎたとなるのかもしれない。
しかし、最終的には国も中央銀行も、経済合理性の前には一敗地にまみえることになる。
その図式は、こうだ。 前代未聞の金融緩和や史上空前の資金供給でもって、マイナス金利やゼロ金利に誘導してきた。
その結果、債券市場はずっと天を舞う勢いで、ブームを満喫してきた。 マイナス金利の国債が7兆ドルも流通しているといった、異常さである。
また、債券ブームを受けて各国では、これまた空前の金額でもって社債や国債が発行されてきた。
債券投資家は、いつでも金利上昇の徴候には敏感である。 保有債券が値下がりに転じたとみるや、即座に売りを出してくる。
彼らの保有債券売りが、さらなる長期金利の上昇を招くという循環で、債券市場はあっという間に暴落していく。
それをもって、経済合理性が働いたという。 いかに各国政府や中央銀行の力が強大であっても、債券保有者が我先の売りを出してきたら、ひとたまりもない。
この津波のような債券売りも、金融バブル崩壊の有力な端緒のひとつである。