新型コロナウイルスのワクチンが早期に普及し世界的に経済活動の正常化が進むとの期待から、東京株式市場は急騰した。
日経平均株価は638円高と、1991年5月以来およそ29年半ぶりの高値を付けた。
すさまじい株高の勢いをみるに、これで世界経済は回復に向かうという楽観に傾きたくもなる。
株価は景気や企業収益の先行指標という面をもっており、本当にこの先は明るいのだろうか?
どうみても、そうは思えない。 たしかにワクチンの普及ニュースは朗報である。
それと、世界の経済活動の本格的な復旧とは別物である。 都市閉鎖や自宅待機で、経済活動のかなりの部分が蒸発してしまった。
飲食店はじめ、多くの中小企業が経営危機に陥ったままであり、そのあたりの苦境を置いてきぼりにしての景気回復は考えられない。
それ以上に問題は、経済活動が回復の方向へ踏み出せば、財政や金融がらみのツケが一気に表面化してくることだ。
たとえば、先進国はどこもコロナ対策でタガの外れたような財政支出を続け、政府債務を異常なまでに膨らませた。
それをどう解消していくか? 当分は、大幅増税などできる環境にない。 それが故に、国債発行を急拡大してきた。
景気が上向けば、金利上昇の機運が高まってくる。 それは、ストレートに財政を圧迫する。
すると、借り換え分を含め新規国債の発行金利が跳ね上がるわけで、一層の財政悪化に火を注いでしまう。
今年度でいうと、当初予算では32兆円の新規国債発行と、107兆円の借換債の発行が予定されていた。(四捨五入)
合計すると、140兆円の国債発行だ。 それに対し、金利はゼロ同然で財政当局も余裕をかましていた。
ところが、コロナ問題で2度の補正予算を組み、国債の新規発行額は90兆円へと跳ね上がった。
借換債と合わすと、198兆円の国債発行となる。 そこへ金利が1%上昇するだけで、2兆円の財政負担増となる。
さらには、金利が上昇の気配を見せてくると、債券価格が値崩れに向かう恐れが一気に高まる。
それはそのまま、長期金利の上昇と一層の債券売りを誘う展開となっていく。
つまり、世界の債券市場そして株式市場は大崩れに入っていくことになるのだ。
ということは、冒頭の株式市場の超バブル高も、その頃には消滅しているのか?
いや、おそらくだが、ずっと早い段階で金融バブルは崩壊の途に就くのだろう。
いつ、なにをきっかにして暴落が始まるのかは、神のみぞ知るのところである。