プライベートバンクの老舗である、ピクテ銀行で長いこと仕事して、いろいろ学んだ。
とりわけ、ピクテにとって長い顧客である、本物の資産家ファミリーからは「なるほどな」の連続だった。
資産家ファミリーといっても、5世代はおろか10数世代にわたって、ファミリーの資産を守り育ててきた人たちだ。
長い年月にわたって資産を守り育てていくのは、口で言うほどたやすいものではない。
その間には、通常の景気サイクルや社会の変化などを超えて、戦争やインフレといったとんでもない事態にも遭遇する。
着の身着のままで逃げなくてはならない状況に陥っても、いつでも現金を手にできる安心感は格別である。
それこそが、本当の資産というものであろう。 また、そういった時に富を周りの人々に分配できるのが本物の資産家である。
これぞ本物の資産家ファミリーといった人々に接してみると、意外に質素な生活ぶりに驚かされる。
彼らは贅沢をしようと思えばいつでもできる。 だから、ガツガツと贅沢に走らない。
せいぜい年に4~6回ぐらいは、盛大なディナーで贅沢しようかといった程度。 かといって、決してケチではない。
あり余る資産は、できるだけ世の中にまわそうとする。 つまり、寄付や社会的な投資などには、実に気前よくお金をつかう。
自分の贅沢にはそう関心はない。 しかし、世の中にお金をまわすのが資産家の役割だという点に関しては、強い使命感を持っている。
こういった人たちが、「お金を持つにふさわしい人々」なんだなと、つくづく感心させられたものだ。
それでいて、ファミリーの資産はすこしずつ膨れ上がっていくのだ。 そこに、なんのカラクリもない。
その根っこに、本格的な長期投資がある。 プライベートバンキングの真骨頂である、本物の長期投資だ。
なによりも大事なのは、資産を保全しつつ殖やしていくという大前提を絶対に崩さないことだ。
戦争はともかくとして、インフレのような事態に陥っても資産価値を守れるようガードを固めて、淡々と長期投資を進めていくわけだ。
おそらく、次の5年間では、経済もマーケットも相当に荒れようが、ガードを固めつつ攻めの長期投資を進めることになろう。