役所や学者先生の間では、エビデンスを重視する傾向が強い。 エビデンスとは事実に基づく状況確認や現実認識を指す。
事実あるいはそれに限りなく近い判断ベースを持つことで、より客観性の高い政策や理論を打ち出せるはず。
それは、その通りだろう。 事実に基づく政策判断や理論構築に対しては、誰も否定できない。
だから、官僚や学者先生はエビデンスを金科玉条のように振り回すわけだ。
ただし、エビデンスつまり現状の把握と、将来に向けての事業戦略や投資行動とは、まったく別ものである。
たとえば、ビジネスにおいて現状維持はあり得ない。 多くの場合、敗者への道となっていく。
よく、「現状は上手くいっている。 だから、このままの状態を守っていけば大丈夫」という経営者がいる。
それでは経営者失格である。 ビジネスの世界では競争が当たり前で、優勝劣敗と適者生存が四六時中問われている。
どこで、誰が、どんな準備をしているか知れたものではない。 そういった緊張感を持った経営姿勢は絶対に欠かせない。
したがって、現状認識は一つの判断ベースに過ぎず、そこからどんな新しい手を打ち出すかが経営というものである。
投資においても、エビデンスつまり現状認識など、もう既に価格に織り込まれている。
そんなものを後追いしたところで、ディーリング益すら得られない。 よくある、後講釈だけは立派な投資家という類いだ。
やはり、事業経営においても、投資運用においても、先読みや先見力は絶対である。
それが経営者の最大の仕事であり、投資家にとって不可欠な能力となるわけだ。
別の角度からみると、事業経営や投資の面白さは、先読みや先見力にこそあるといっていい。
そこから、自分が座右の銘としている「お先にゴメンね!」が出てくるのだ。
現状がどうのこうので口角泡を飛ばしている人たちが多い。 そんな暇人たちとは付き合っておれない。
だから、お先にゴメンねで、先の手を次々と打っていくわけだ。
エビデンス? そんなものは、事業家や投資家が行動した後についてくる現実でしかない。