金融が経済を牽引するという妄想

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金融はもともと経済活動の潤滑油、あるいは血液の役割を果たすものである。

人々の日々の生活と、そしてそれを支える企業の生産供給活動が潤滑に行われるべく、いろいろな金融サービスが発展してきた。

銀行でいえば、預貸業務から資金決済、送金や住宅ローンまで多種多彩である。

我々のような資産運用業務もあれば、信託銀行の受託業務もある。 保険ビジネスも金融サービスである。

そういった経済活動の潤滑油あるいは血液であるはずの金融が、いつの間にか経済活動の牽引車として主役扱いを受けることになっていった。

この流れは、1990年代後半から徐々に加速し、21世紀に入るや一気に奔流となっていった。

大量の資金供給で、与信業務やマーケットでの高速ディーリングを、青天井で肥大化させた。

それが多くの雇用を生み、あたかも金融の拡大が経済成長を牽引するかのような錯覚を生んだ。

しかし、金融はあくまでも経済活動の潤滑油や血液であって、自ら富を生むことはない。

あるのはせいぜい金融ビジネス関連の雇用の創出と、マネーゲームで稼いだあぶく銭が消費に向かう経済効果だけである。

ところが、ここへきて世界の多くの銀行が大量解雇に走ったり、ディーリング益が縮小したりで、金融界が寄与する経済拡大効果は薄れている。

それを裏付けるのが、今日の日経新聞にあった世界の中央銀行の資産拡大である。

2007年から現在までの11年余り、米国・EU・日本・中国の中央銀行のバランスシートは3.4倍に拡大している。

史上空前の資金供給に走ってきたものの、経済規模の拡大は2倍に遠く及ばない。 マネー経済が拡大しただけだ。

さてさて、このままマネーゲームの暴走が続くのか、どこかで大量にばら撒いたマネーの価値が失墜するのか。

はっきりしているのは、社会にそれほど富を生んでいないということ。 その横で、世界人口は毎日20万人ずつ増えている。

世界経済の自然体での拡大傾向は、なにがあっても止められない。 したがって、われわれ長期投資家はそこに焦点を当て、どっしりと構えるだけ。

それに対し、いずれマネー経済はどん詰まりとなり、世界のマーケットで大荒れは避けられない。

それは、われわれ長期投資家にとって、すばらしい買い仕込みチャンス到来となる。

願わくは、いまのうちからファンド仲間をどんどん増やしていき、軍資金をたっぷりとお預けいただきたいもの。