ウチの、さわかみファンドのお客様には、ことある毎に「マーケットなど見なくていいよ」といっている。
長期にわたって財産づくり航海をしていく「さわかみ丸」に乗り込んでいただいた以上は、ゆったりと乗っていてください。
運用はこちらがするので、マーケットがどうのこうのは忘れてもらって構わないですよ。
意識してほしいとすれば、余裕のある資金はどんどん「さわかみ丸」に積み込んでもらうことだけですと。
投信ビジネスをやる以上は、そう言い切れなくてはおかしい。 せいぜい、「お互い、運命共同体として頑張りましょう」だ。
よくよく考えたら、「マーケットは見ない」は多くの投資家に対してもいえることだと断言できる。
投資家なら、「安く買っておいて、高くなるのは待って売る」という行動が求められる。
安い間に買っておくとなれば、なにかの加減で株価全般が大きく下げたところで買いに入ればいい。
ということは、日々のマーケット動向などさらりと流しておく。 そして、新聞やテレビで株価暴落と騒ぐときにだけ、買いを考えればいいわけだ。
暴落相場で買っておけば、株価全般が少し戻っただけでも、そこから先はいつ売っても利益となる。
投資なんて、これだけのこと。 別に難しいことは何もない。 要は、大きく売られた時に、買いに入れるかどうかだ。
ところが、多くの投資家は個人も機関投資家も、マーケットにどっぷり浸かって、その中で値ざやを抜こうとする。
そんなもの、投資ではない。 トレーディングいうものだ。 投資家ではなく、株価のディーリング売買を専らとするトレーダーを指す。
ディーリングともなれば、マーケット動向つまり株価の時々刻々の動きをとらえて、値ざやを稼ごうとする。
それは、マーケットの波に身をゆだねながら、必死になって「安く買って、高く売る」を繰り返すようなもの。
これは難しい。 波に揺られながら買ったり売ったりの判断を、時々刻々と降さなければならないのだから。
そして、自分たちの買ったり売ったりが、次々と波のうねりをつくっていくのだ。
冒頭の、「マーケットは見ない」に戻ろう。 世界の機関投資家は1980年代90年代に、すごい勢いでディーリング投資に傾斜していった。
そして、まともな投資家はどんどん駆逐されていった。 というか、トレーダーに変身していった。
いまや、トレーディング商いが機関投資家運用のほとんどといっていい状態になってしまった。
投資運用ではなく、資金運用だ。 世界中の巨額マネーが株価を追いかけ回っている。 それも、ディーリング売買で。
ということは、日々のマーケット動向は上へでも下へでも、どちらにも瞬時に移り変わる。
そんな浮草のような値動きを、いくら真剣に眺めていてたところで、どこで買って良いのか判断しようがない。
そういった、骨折り損のくたびれもうけというしかない投資のまねごとは、機関投資家にやらせておこう。
われわれ長期投資家は、のんびりと暴落相場を待とう。 まあ、さわかみファンドの動きを見ていてもらえばいい。
いまから出張なので、明日の長期投資家日記はお休みです。