市場機能を歪めて、その先には?

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世界的な過剰流動性問題は1970年代初頭にさかのぼる。 以来、今日に至るまで資金の供給過剰が続いている。

国家が大量に資金を供給すれば、その影響力は強大で市場機能は強引に歪められる。

すこし、みてみよう。 60年代後半から、米国企業の多国籍化や米国の財政赤字拡大で、ドルの垂れ流しが本格化した。

そして、73年11月の第1次石油ショックで原油価格が1バレル3ドル以下だったのが、10ドルに跳ね上がった。

追い打ちをかけるように、79年末から80年初にかけて、原油価格はさらに30ドル34ドルへと急上昇した。

エネルギー価格が10倍にもなれば、世界の消費需要は激減し、世界経済はガタガタになる。

そこで、世界は先進国中心に大量の資金供給に走った。 景気対策のためということだが、過剰流動性の始まりとなった。

もうひとつ。 70年代には、年金資金の積立てが加速度的に膨れ上がっていった。 これも、形を変えた過剰流動性の供給である。

大量の資金供給と年金の買いで、世界の株価はピンポン玉のように跳ね上がっていった。

92年の8月に、ようやく米国は景気回復を宣言できた。 景気が立ち直ってくれば、過剰流動性は危険である。

それで世界はゆっくりと金融の引き締めに向かい始めた。 このころまでは、そういった金融のバランス感覚が支配的であった。

ところが、97年ぐらいから2000年のコンピュータ誤作動問題が意識され始めた。

世界のコンピュータが99年の年末から2000年に、きちんと作動できないと大変なことになる。

金融はもちろん、世界のビジネス活動や交通に大混乱をきたす。 それを未然に防ごうと、各国は資金を大量に供給した。

幸い、コンピュータの2000年問題は無事クリアした。 そうならばと、各国は金融引き締めを本格化させた。

それが、2000年3月からの株価暴落、いわゆるITショック、情報通信ショックを招いた。

それでも各国は過剰流動性の吸収に主眼を置いていた。 ところが、2001年9月に同時多発テロが発生し、世界経済は大混乱した。

これはマズイことになったと、世界は再び過剰流動性に舵を切った。 株価や債券価格はどんどん上昇していった。

もうそうなると、金融の一人歩きが加速するばかり。 当時のグリ-ンスパンFRB議長に、いわれなき熱狂と言わしめた。

いわゆる金融の時代に突入していって、2007年8月のサブプライムローン問題、2008年9月のリーマンショックを迎えた。

世界の金融も経済活動もガタガタとなってしまった。 そこで、史上空前の資金供給と相成ったわけだ。

これらをまとめると、1970年代から今日に至るまで50年近く、世界中で大量の資金供給が続けられてきたのだ。

50年近くも資金の大量供給状態が続いていれば、それが正常という感覚にもなってしまう。

政府中央銀行という無限の資金供給力を持った参加者が、市場の価格形成にどれだけ大きな影響を及ぼしているのか。

このあたりが鈍感になったままの株価や債券・不動産の価格にどこまで信をおいて良いものか、しっかり考えておこう。

ひとつの救いは、米FRBは2年前から、またヨーロッパ中央銀行も来年から出口戦略にと、金融の正常化を進める方向にあることだ。

このまま過剰流動性を放置していると、新たなるバブルとその先でインフレを招くのは必定。

その芽を未然に積んでおきたいということだが、ひとり日銀は資金をバラ撒き続けている。 インフレへの道をひた走っているわけだ。